ストレス耐性の高い種苗作りを目指して、日常的な軽度のストレス経験によるストレス耐性の向上効果を検討した。最終年度である2020年度はCOVID-19の影響による研究自粛のため9月以降から実験を開始した。 本年度は手網による追尾ストレスに注目して、ストレス耐性の訓練について検討した。ゼブラフィッシュでは、2週間の追尾処理を施した後に加温ストレスおよび空中暴露ストレスを与えて、血中グルコースの測定によってストレス状態を検討した。追尾処理区の個体では若干のストレス耐性の向上効果がみられたが、ストレス耐性の向上効果の個体差が大きく顕著な効果は確認されなかった。キンギョでは、追尾処理と空中暴露処理を合わせて訓練(2週間)を行ない、ストレス(加温ストレス、空中暴露ストレス)を負荷した後の行動テストを行った。訓練によるストレス耐性向上効果の傾向はみられたが、顕著な差はみられず、この理由として対照区においてもストレス負荷時に不安・恐怖行動をみせる個体が考えられた。今後、新たな訓練方法を開発し、多様な魚種に適用できるストレス訓練手法を明らかにすることが求められる。 本研究に関連する研究として、魚類のストレスがどのような経験によって誘発および促進されるのかを検討した。具体的には、警報物質処理に対するストレス効果の検討を行い、ゼブラフィッシュでは自己の皮膚から採取した警報物質においてもストレス反応が現れることを明らかにした。また、魚釣りによって経験する釣り上げが魚類のストレス応答およびストレス回避行動を促進することを明らかにした。さらに、ゼブラフィッシュでは、赤い光を点灯した環境で手網追尾処理を施すと、通常環境の魚よりもストレス応答が強くなることが示された。今回明らかにされたストレスを誘発・促進する刺激は、魚類のストレス耐性訓練への適用においても重要な知見となることが期待された。
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