本研究の目的は、重要な漁業資源であるブリの日本海-太平洋間の移動履歴を、魚体に蓄積されるネオジム(Nd)の同位体比(143Nd/144Nd)に着目して、これを再現する手法の開発を行うことであった。これを達成するために、回遊経路と再捕獲された個体の魚体組織中のNd同位体比値の同時取得を試みて、「日本海-太平洋間の移動履歴」と「魚体中のNd同位体比」の関係を調べる予定であった。しかしながら、研究代表者の所属機関で過去に収集したアーカイバルタグデータを精査したところ、照度時系列データから推定する位置精度では上記検証を実施するには不十分だとの結論に至った。そこで、当所の予定を変更してアーカイバルタグの位置データを補正する統計モデルの開発を行うこととして、これを実現した。そしてその成果を更に精査して取りまとめ、国際学術誌に投稿して受理されるまでに至った。また、収集した魚体サンプルのNd同位体比を測定する試みについて、前処理プロトコルの確立を行いブリの筋肉及び肝臓組織の酸分解を行った。Nd同位体比分析に必要な組織の重量を見積もるため、ここから一部を分取・希釈し、ICPMSによるNd濃度の定量を行った。
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