研究課題/領域番号 |
18K14521
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
村田 良介 長崎大学, 海洋未来イノベーション機構, 助教 (40809159)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | カミナリイカ / 性分化 / GnRH / 性ホルモン |
研究実績の概要 |
カミナリイカの生殖腺の性分化過程の組織学的観察の結果、産卵後28日目、孵化の約1週間前に未分化生殖腺中に減数分裂を開始した卵母細胞が出現し卵巣分化が起こることを明らかにした。一方、卵巣分化から30日ほど遅れて、精巣の特徴的構造である精小嚢が形成され、精巣分化が起こることを明らかにした。これらの成果は論文にまとめて現在投稿中である。 カミナリイカの脳から抽出したトータルRNAを鋳型にcDNAを合成し、タコや他のイカ類のGnRH遺伝子配列を参考に設計した縮絨プライマーを用いて本種のGnRH遺伝子のクローニングを行なった。決定した塩基配列を元に本種GnRH遺伝子のリアルタイムPCR測定計を確立した。さらに本種GnRHに対する特異抗体を作成した。 生殖腺の性分化に伴う脳におけるGnRH遺伝子発現変動をリアルタイムPCRにより調べた結果、生殖腺が未分化な孵化前からすでに脳内においてGnRH遺伝子の高い発現が認められた。その後生殖腺の性分化、発達に伴い、GnRH遺伝子の発現量に雌雄差は認められなかったものの、雌雄共に性分化期に他の時期と比べて高い発現量を示した。特異抗体を用いた免疫染色の結果、本種の脳内の脳下脚葉および視柄腺周辺部にGnRH陽性反応を示す神経細胞および神経軸索が観察された。生殖腺が未分化な孵化前の時期にはGnRH陽性反応細胞は少数であったが、生殖腺の性分化期に陽性反応細胞数が顕著に増加する傾向が見られ、性分化期以降も多くの陽性反応細胞が検出された。 一方、本種の血リンパ中の性ホルモン(エストラジオール17beta, テストステロン, コルチゾール)濃度測定を行なったが、いずれのホルモンも繁殖期、非繁殖期に関わらず検出されなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. カミナリイカの育成技術を用いて本種生殖腺の性分化過程を組織学的に明らかにすることができた。 2. カミナリイカのGnRH遺伝子をクローニングし、遺伝子発現定量系と免疫染色法を確立することができた。 3. 生殖腺の性分化に伴う脳内GnRH発現プロファイルをmRNAおよびタンパクレベルで明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
・性分化前の胚の外部卵嚢に合成GnRHを注入し生殖腺の分化、発達への影響を調べ、本種の性分化におけるGnRHの関与を明らかにする。 ・カミナリイカ生殖腺の性成熟過程に伴うGnRH発現プロファイルを解明すると共に、未熟個体への合成GnRH投与による生殖腺への影響を調べ、本種の性成熟におけるGnRHの果たす役割を明らかにする。 ・生殖腺組織中における性ホルモン量の測定を行い本種の生殖における性ホルモンの関与を調べる。vivoから性ホルモンが検出された場合、in vitro系を用いてホルモン合成部位の特定、ホルモン合成酵素の探索を行う。
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