アオリイカのGnRH遺伝子のクローニングを行い定量PCR用のプライマーを設計した。性成熟進行におけるGnRHの関与を調べるために、11月から6月の間、野外からアオリイカを採集し、生殖腺の発達を組織学的に観察すると共に、脳内GnRH遺伝子発現量を定量PCRにより測定した。その結果、雌雄とも生殖腺の発達状態に関わらず脳内GnRHは一定の発現変動を示し、優位な変動は確認されなかった。このことから本種の生殖腺発達とGnRHとの関与は明らかにはならなかった。 カミナリイカの生殖細胞マーカー候補因子であるpiwi遺伝子と、GnRH受容体遺伝子のクローニングを行い、ISH用のプローブ合成と定量PCR用プライマーの設計を行なった。 カミナリイカの成熟・産卵を制御する環境要因を明らかにするために、飼育下にて育成したカミナリイカ未熟個体の雌雄ペアを、12月~2月の期間、①昇温、長日化処理、②長日化処理のみ、③自然水温日長、の3群を用意し、産卵の有無を調べた。その結果、②の雌個体のみ、長日化終了後1週間後に産卵した。しかし産卵数はごく少量であり発生の進行も見られず未受精卵であると考えられた。卵巣の状態も未熟であり、卵黄形成途上の状態であった。①の雌個体は実験期間中に産卵は確認されなかったが、実験終了後の卵巣は卵黄蓄積が完了した卵で満たされた状態であった。このことから本種の産卵開始には光情報が重要である一方、水温上昇は産卵の抑制と卵黄蓄積の進行を促す作用がある可能性が示唆された。
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