研究実績の概要 |
化学物質は体内で活性酸素などを発生させる可能性があり、それらに対応するための抗酸化作用には様々な物質が存在するが、そのひとつとしてアスコルビン酸(AsA)があげられる。我々の先行研究において、含酸素多環芳香族炭化水素類などの化学物質をヒメダカ胚に暴露すると、孵化仔魚の形態異常が確認され、骨形成への影響が示唆された。骨形成にはアAsAも関わっており、魚胚中のAsAの変動や酸化ストレスが起きていることが予想された。本研究では、ヒメダカ胚を用いて環境を汚染する原因となる化学物質が魚胚に暴露された際の酸化ストレスと体内でのAsAの役割を調べることを目的としている。 最終年度では、アスコルビン酸を欠乏させた餌を作成し、親魚に与えることで得たアスコルビン酸欠乏胚への化学物質の影響を調べた。欠乏胚への暴露物質は先行研究により発生毒性が認められている含酸素多環芳香族炭化水素類のひとつである1,2-ベンズアントラキノン(BAQ)とし、胚中のAsAと化学物質暴露による影響の関係を調べた。なお、胚中のAsA測定はHPLCにより行った。その結果、胚中のAsA濃度の減少に伴い、BAQ暴露の毒性が高くなることが顕微鏡による魚胚の形態観察により確認された。また、骨形成や血管・心臓に関する奇形誘発率が経時的に上昇しており、酸化ストレスによる発生毒性への関与が示唆された。しかし、魚胚中の酸化ストレスのバイオマーカーであるTBARsを調べたところ、対照区との有意差は認められず、BAQ暴露により生じる影響は脂質の過酸化の酸化ストレス以外である可能性が考えられた。
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