研究実績の概要 |
オオウナギの雄とニホンウナギの雌を掛け合わせて作出した交雑種および同じ雌に由来するニホンウナギを2家系(LotAおよびLotB)作出した。得られた受精卵および仔魚は常法に従い管理した。受精率、ふ化率はともに交雑種よりもニホンウナギの方が20%以上高かった。 自然環境下においてオオウナギなどの熱帯ウナギの仔魚期間はニホンウナギなどの温帯ウナギに比べて短いことが知られている。したがって、オオウナギとニホンウナギの交雑種はニホンウナギに比べて仔魚の飼育期間が短縮される可能性がある。これを確認するために、作出した3ロットを変態開始まで常法に従い飼育した。飼育期間中の生残率は、LotAでは40日齢以降は交雑種がニホンウナギよりも生残率が高かった。一方、LotBの生残率は、飼育期間を通して大きな差は無かった。LotAでは20, 40, 160, 200日齢において、有意に交雑種がニホンウナギに比べて大きかったが、LotBではそのような差は認められなかった。さらに、累積の変態開始個体数と300日齢時点における変態開始率を調べたところ、LotAとLotBの累積変態開始個体数は200日齢以降、交雑種はニホンウナギに比べて多い傾向が認められた。また、300日齢時点におけるLotAとLotBの変態開始率は、それぞれニホンウナギは33%と43%であったのに対して、交雑種が97%と88%であり、交雑種の仔魚期間が短い傾向が認められた。 さらに本年度は、交雑種の遺伝育種学的基盤の整備のために、オオウナギのゲノム解析を実施した。オオウナギの血液からDNAを抽出し、ナノポアウルトラロングシーケンス解析に供し、約50Gbpの配列情報を取得した。Flye2.9でアッセンブリしたところ、良好なドラフトゲノムが構築出来た。
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