本年度に行った生産効率性の分析結果についてまとめる。本分析はコロナパンデミック前のデータである2020年度の根釧地域の酪農経営270経営程度の酪農経営に対するアンケート調査及び業務データ利用許諾の確認を元に作成した、199経営分の年間労働時間・飼料費・人件費を除く可変費用・減価償却費・労働節約的技術の使用状況・農業技術情報の取得手段等のデータベースを作成し、それを元に分析を行っている。 分析の際には包絡分析による経営効率の計測を行ったが、サンプルサイズを考慮しブートストラップ法による補正を行っている。分析の結果から、小規模層から農業収入1億円強程度までは大きな効率性の変化はなく、それ以上の規模になると生産効率の向上が見られることが明らかとなった。その際に規模効率性自体は生産規模間で大きな変化が存在せず、現状の根釧地域内の酪農経営においては規模間で大きな生産性の差が存在していないといえる。 ここで得られた生産効率性について、住所を得られた経営についてMoranのIによる空間的自己相関の検定を行ったところ、有意な結果は得られなかった。この結果は欧米における研究で推定された経営間の技術のスピルオーバーが存在するという仮説とは異なったものであるが、同時に行ったアンケート調査における技術情報の獲得手段については農協や獣医といった産地内の関連産業者からの情報取得が多く、同業者間の情報交換を重要なソースとしている経営が少なかったこととも一致する。 一方で、生産効率性についてGetis-OrdのGi*によるホットスポット分析を行ったところ、根釧台地の中央部に有意なホットスポットが観察された。コールドスポットは観察されなかったことから、生産効率性の高い経営間でスピルオーバーが存在している可能性は指摘できる。
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