本研究は、インターネット上の不確かな情報による消費者の買い控え行動が、フードシステムを介し消費者自身に与える損失を明らかにすることを最終的な目的としている。具体的には、①表明選好法によりインターネット上の「不確かな情報」による消費者の買い控え行動の起こりやすさ(買い控え実行度)を調査し、②買い控え行動がフードシステムに及ぼす影響を明らかにし、③顕示選好法を用いて「買い控え実行度」によるフードシステムの変化が消費者効用に与える影響を検証する。研究2年目となる平成31年度(令和元年度)は、消費者へのアンケート調査を実施し、買い控え行動が価格交渉力へ及ぼす影響の解明を試みた。 アンケート調査では買い控え行動を誘発する情報を(1)文章で提示、(2)ビデオの動画で提示、(3)与えないの3つのサンプル群でデータを収集した。アンケート調査では国勢調査統計情報に則り、オンラインを用いて各サンプルで有効回答2500人、合計有効回答7500人の大規模調査を実施した。収集データを分析した結果、買い控え実行度は伝達手段よりも回答者の属性(性別、年代、家族構成)に影響を受けることが明らかになった。また、情報の確度による影響の違いも見られた。今後は、より詳細な情報伝達手段ごとの消費者の買い控え実行度の違いを解明する研究へと展開する計画である。 研究初年度には消費者の購買行動についてのアンケート調査票を作成するにあたり、国際共同研究などによる消費者の行動分析の研究成果を発表した。また、研究成果の一部は日本農業経済学会北海道大会においてポスター賞を受賞した。研究2年目の最終年度には、国内外の学会大会において研究成果の発表を行った。さらに雑誌論文での掲載を目指している。
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