研究課題/領域番号 |
18K14532
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鬼頭 弥生 京都大学, 農学研究科, 講師 (50611802)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 食品由来リスク / リスク認知 / 食中毒 / 消費者行動 / 情報探索 |
研究実績の概要 |
<小課題1:食中毒リスクに関する知識・認知・行動と規定因の研究> 本年度は、昨年度実施した自由記述式のWeb調査(とくに鶏肉の生食行動・調理行動とその規定因に焦点を合わせた調査)のテキストマイニングを行った。鶏肉の生食行動の要因については、飲食店に対する信頼、新鮮さに関する信念、嗜好性、他者の勧め、食中毒の経験・知識など、幾つかの類型をとらえながら要因を抽出することができた。しかし、家庭での調理時の衛生管理については一般的な回答が多く、個々人の知識・認知・行動について、実際の調理の文脈に即した特徴を十分にとらえることができなかった。後者については、先行研究および今回のWeb調査の結果を踏まえ、より具体的文脈に即した調査を追加で行う必要性があることから、追加の自由記述式調査の設計を行った。 <小課題2:食中毒リスクに関する消費者の情報探索の実態の研究> 本年度は、食中毒リスクに関する消費者の内的情報探索の実態を把握するための調査手法の文献を収集し、検討を行った。内的情報探索とは、対象に関して記憶に保持された知識(特徴、評価、経験を含む)やイメージを再生するプロセスであるといえることから、マーケティング分野で用いられているラダリング法、ZMET法、リスク認知研究でも用いられているワードアソシエーション法が有効と考えられた。これらの手法は半構造化インタビューによることが一般的であるが、サンプルサイズの確保を可能にする手法(オンライン上で行うハードラダリングおよびワードアソシエーション)も候補とし、2パターンの調査設計を行い検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
小課題1においては、昨年度のWeb調査(自由記述式)の結果から、鶏肉の生食行動の要因については把握することができた。しかし、調理行動(家庭での調理時の衛生管理)については、習慣的行動であるためか、一般的な衛生管理の知識といえるような回答が多く、より具体的文脈から質問し回答を得る必要性が浮かび上がった。そこで、定量調査のための仮説および質問項目はある程度想定しながらも、追加の定性調査の設計を行うこととなった。 小課題2について、当初は小課題1のWeb調査結果をもとに対象集団を絞り、少人数の定性調査と、その結果を検証する定量的な調査・分析を行うことを想定していた。しかし、小課題1の自由記述式Web調査結果から、年齢・性別を特定の階層に絞らずに幅広い集団を対象に調査する意義が見出され、また、記述式回答を定量的に分析し傾向を把握することの有効性が見いだされた。そのため、当初想定していた調査の枠組みを見直す必要があった。
|
今後の研究の推進方策 |
小課題1について、次年度は、家庭での調理時の衛生管理に関する知識・認知・行動に重点をおいた自由記述式の調査を実施する。分析結果は、テキストマイニングにより解析する予定である。さらに、2度の自由記述式調査の結果を踏まえて仮説モデルを確定し、定量調査のための質問項目を確定し、Web調査を実施する。得られたデータに対しては、構造方程式モデリングにより解析を行う。なお、解析結果については、学会報告ならびに論文投稿を行いたいと考えている。 ただし、これらの調査にあたっては、新型コロナウイルスの感染拡大による衛生管理意識への影響、および、外出自粛による食品消費行動の変化(とくに、飲食店における鶏肉の生食は大きく減少したと考えられるため、注意を要する)を考慮する必要がある。 小課題2については、次年度に、消費者の食中毒に関する内的情報探索の内容とその情報源について定性的に明らかにする調査を実施する。新型コロナウイルス感染拡大防止のために、一般消費者への対面インタビューが困難な時期があると考えられることから、電話またはオンラインでのインタビュー調査、または、定性的なWeb調査(ハードラダリングまたはワードアソシエーション)を実施するなどの対応策をとることを考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度に実施予定であったWeb調査(小課題1)および定性調査(小課題2)を次年度に延期したことから、その分の調査費を繰り越すこととなった。その結果として、最終的に次年度に440,593円が繰越されることとなった。繰越分については、次年度予算とあわせてWeb調査(または定性調査に必要な被験者謝金)の費用に充てる予定である。
|