研究課題/領域番号 |
18K14539
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
高田 晋史 島根大学, 学術研究院農生命科学系, 助教 (90739781)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 大学生村官 / 大学生志願服務西部計画 / 特崗教師 / 三支一扶計画 / 地域サポート人材 / 中国農村 / 農村リーダー |
研究実績の概要 |
中国では,農村部の貧困問題や高齢化による人材不足に対応するため,新卒者を中心とする若者を農村部に派遣し,地域自治や学校教育,貧困削減に従事させるといった,いわゆる地域サポート人材事業を行なっている。具体的には,大学生村官制度,大学生志願服務西部計画,特崗教師,三支一扶計画があり,これらの制度で農村部に派遣された若者はこれまで計100万人以上に達している。その一部は,農村部に定着し,起業したり,地域幹部として村の自治に関わったりするなど,新たなリーダーとして重要な役割を果たしている。 本年度は,こうした中国における地域サポート人材事業の実態に関する資料の収集と現状把握を行った。具体的には,中央政府が発表している政策や文書の内容を収集・整理し,制度の変遷とその背景について考察した。また,地元大学の研究者と共同で,陝西省安康市寧陝県で大学生村官に関する予備的調査を行った。ここでは,大学生村官や村官が活動する村の幹部,村官を管理する地元共産党組織部の幹部に対してヒアリング調査を行い,村官制度の詳細や管理体制,村官の活動状況についてのデータや情報を収集した。 この結果,ヒアリングを行った多くの村官は,仕事を通して農村への価値観がポジティブに変化し,多くが任期終了後も何らかの形で地域に関わり続けている。そして,その一部は起業をすることで大きな経済効果を生んでいた。また,多くが村官の任期中から地域で重要な立場や権限を与えられており,農村の新たなリーダとして地域の発展に大きく貢献していることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
農村の新たなリーダーの台頭に大きな役割を果たす地域サポート人材事業に関する政策や文章の整理については順調に進んでいる。また,現地の研究者との関係構築も順調で,意見交換も積極的に行うことができている。このことから,陝西省での予備的調査を行うことができ,わが国において情報が少ない大学生村官の実態を把握することができ,仮説構築において有意義な機会となった。それに加え,雲南省での調査準備も順調に進んでおり,地元大学の研究者とも積極的に意見交換を行っている。 その一方で,研究成果の発表という点では若干の遅れが生じているが,陝西省と雲南省というこれまで関わりのなかった地域を開拓し,実態調査を行うメドが立ったという点からも大きな問題はないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,陝西省と雲南省において大学生村官に関する実態調査を行い,村官が農村の新たなリーダーとしてどのような役割を果たしているか,リーダーとして機能している背景やその仕組みについて分析を行う。 また,当初の計画では,郷村観光の発展に伴い,地域住民を組織化して観光業を展開する法人(観光経営体)を設立・運営することで,新たなリーダーとして台頭した住民に焦点を当てた研究をすることになっている。郷村観光については,これまで取り組んできた研究テーマなので,調査地の選定や地元研究者の関係構築という点で大きな問題はなく,スムーズに実態調査が実施できるものと考えている。ここでの調査から,新たなリーダーの個人属性やリーダーシップ行動の特徴,リーダーとしてのナレッジをいかに獲得してきたのかを分析する。このことで,大学生村官制度という外部からの働きかけにより台頭したリーダーと,地域内部から台頭したリーダーという2タイプを分析する。
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