研究課題/領域番号 |
18K14539
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高田 晋史 神戸大学, 農学研究科, 助教 (90739781)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 農村リーダー / 地域サポート人材 / 中国農村 / 定住 / 農村就業 |
研究実績の概要 |
本年度では、中国農村の新たな担い手として注目される地域サポート人材の意識分析を行った。中央政府は現在、大学を卒業した新卒者を農村へ派遣する基層就業項目(「西部計画志願者事業」「三支一扶事業」「特崗教師事業」「大学生村官事業」)を実施している。基層就業項目によって農村に派遣され、農村振興に従事する地域サポート人材の一部は、農村部でリーダー的役割を担うようになり、任期終了後も自治組織の幹部や起業家として村の発展に貢献している。 本年度は、こうした地域サポート人材へのアンケート調査から、①どのような若者が積極的に農村に向かっているのか(農村就業意識)、任期終了後どのような若者が②地域に残るのか(定住意識)、あるいは③地域外に居住しても当該地域に関わり続けるのか(関わり意識)を定量的に分析した。 分析の結果、年齢が高くなるほど農村就業意識が高まる傾向がみられた。これは年齢が高くなると都市部での就職が不利になることと関係しているといえる。また、地域に残る割合が最も高かったのは、中学校に赴任した特崗教師であり、逆に小学校に赴任した特崗教師は最も低かった。これらの要因については、待遇や仕事環境との関係から分析を行ったが統計的に有意な結果は得られなかった。定住意識や関わり意識は、仕事への適合度や家族や職場からのサポートの充実度と関係があり、外部人材を効果的に活用し定着させるには、彼らをサポートする仕組みの充実が求められることが示唆された。 この他、一部の農村で新たなリーダーとして台頭している農民企業家(地域を拠点に多様なビジネスを展開する農民)に着目し、どのような農民が農民企業家へと転身するのか、彼らは農村の発展にどのように貢献しているのかを分析するため、実態調査を行う予定であったが、COVID-19の発生により調査は次年度に延期することとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
最も大きな要因は、COVID-19の発生により、実態調査を実施することができなかったことである。特に、年度末に複数の調査を予定していたため、COVID-19の影響を大きく受けることとなった。そこからWebを使った調査方法に切り替えて対応したが、COVID-19が一定程度終息するまで現地における研究協力者の協力を得ることが困難であった。今後は、現地の研究協力者とも議論し、Webアンケートに加え、オンラインインタビューなどの可能性も探りながら、対応していきたい。 また、本年度は学会での報告も予定していたが、出席予定であった学会がCOVID-19拡大のため中止となり、研究成果を発表する機会が得られなかったことも要因である。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響で、しばらくは現地での実態調査の実施が不可能になる可能性が高い。ただ、本年度の研究からWebを通じたアンケートがある程度有効的であることがわかった。したがって、現地の研究協力者の協力も得ながら、Webアンケートの範囲の拡大やオンラインツールを用いたヒアリングを行うなどして、研究を継続していきたいと考えている。 本年度、実施した地域サポート人材に対するアンケートは、その対象が大学生村官と特崗教師にとどまったが、現地での協力が得られたため西部開発志願者や三支一扶まで対象を拡大することが可能となった。まずは、これらの分析を行い、その結果を学会誌に発表する予定である。 そして農民企業家に関する研究については、研究協力者のサポートも得ながら、オンラインなどで可能な範囲から情報収拾を行っていきたい。また、本来、3年目には地域住民へのヒアリング調査を行う予定にしていたが、それについてはオンラインでの調査は期待できないため、しばらく状況を見た上で、研究協力者と議論しながら対応を考えたい。
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