研究課題/領域番号 |
18K14540
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研究機関 | 名寄市立大学 |
研究代表者 |
今野 聖士 名寄市立大学, 保健福祉学部, 准教授 (00727076)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 農業雇用 / 農業雇用労働力 / 地域労働市場 / 労働力の需給調整 / 労働力不足 / 労働力不足の周期的発現 / 地域的需給調整システム / 援農ボランティア |
研究実績の概要 |
近年、農業雇用労働力不足が各地で顕在化する中で、その需給調整を何らかの形で行う重要性が指摘されているが、青果物・果樹等の “労働多投的で作業ピークが存在する作物”の場合は、その需給調整が難しいため、成功事例も少なく、研究も個別事例の分析に留まっている。このため、本研究では、農業構造・労働市場・システムの担い手が異なる地域においても適用可能な形で、農業雇用労働力の地域的な需給調整システムの構築モデルを明らかにし、提示することを目的としている。 研究を実施していくにあたり、農業雇用労働力を取り巻く状況が大きく変化した。これまでよりも労働力供給がより逼迫の度合いを強め、農業を含む全産業において(職種の偏りは大きいものの)労働力需要の逼迫が起っている。 また、大きな社会的変化として、労働力需給調整の広域的取り組みが一般化してきた。研究者による先進事例の分析が広く社会の価値となる段階から、実務家が積極的に取り組む事例が一気に増大した。このため、農業雇用労働力の需給調整システムの分析は、現在の勃興的な取り組みの事例分析ではなく、より本質的な労働力不足の発現体系、およびより多様な労働力給源の参画条件の解明に注力すべき状況となった。 よって、農業雇用労働力の給源分析のうち、「なぜ農業雇用労働力の不足は一過性のものでは無く、逼迫と緩和を繰り返す周期的発現が見られるのか」と言う分析視角から農業雇用労働力の需給動向について歴史的に分析を行った。続けてより多様な給源に対する研究として、学生や障害者といった援農(ボランティア等)の取り組みについて調査を行った。これは農業が臨時労働力に対して再生産可能な水準を供給できていないため、別の論理で再生産されうる主体を分析する必要があると考えたからである。一方で先行事例として分析予定であった海外調査はコロナ禍の影響で本年度も実施できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究の進行については、2019年夏頃まで順調に進展していたが、以下の2点について大きな遅延が生じている。 1点目は海外調査の遅延である。2019年夏~秋にかけて韓国調査に赴く予定であったが、反日感情の高まりにより調査予定先のアポイントがキャンセルされ、時期を改めることとなった。冬に実施すべく調整していたところ、コロナ禍の影響を受け、全く海外渡航が見通せない状況となり、2020年度に繰り越したが、コロナ禍はおさまらず、韓国の調査・分析が不能となっている。 2点目は国内調査における出張制限を受けた需給調整の広域的取り組みの分析についてである。九州地方で主に実施が進んでおり、2020年度に調査を予定していたが、同じくコロナ禍の影響を受け、調査が実施できない状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響を受け、海外調査が見通せなくなっている。本研究の最終報告には韓国の事例による示唆が重要であることから、やむをえず1年間の延長を行なった。4年目後半にかけてコロナ禍が落ち着くようであれば予定していた調査を実施したいが、収束しない場合は一部構成を変更し、国内事例の研究にて代替する予定である。 国内調査に関しても、大きく地域をまたいだ調査は今もって実施が難しいため、居住地域の周辺における研究調査を代替策として行う予定である。幸い、非市場的労働力市場の分析適地であることや、あらたな労働力需給調整の取り組みを始めている農協があり、調査許諾も得られているため、現状は近隣で研究を継続する。コロナウイルスの影響が2021年度後半に至っても収束しない場合には、地域限定的な調査によって結論を導けるよう、調査構成を見直す準備を進める。具体的、先進的な取り組みの分析による発展方向の研究から、角度を変え、不足する労働市場の中でいかに農業で働く人材をサスティナブルに供給してもらうのか、その視点を農外の経済主体との関係性から導く方向で検討を進めているところである。
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次年度使用額が生じた理由 |
韓国調査が、コロナ禍の影響を受け、実施できなかったため、残額が生じている。 次年度はコロナウイルスの影響が収束次第、この残額を用いて韓国調査および国内調査を実施したい。
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