近年、農業雇用労働力不足が各地で顕在化する中で、その需給調整を何らかの形で行う重要性が指摘されているが、成功事例も少なく、研究も個別事例の分析に留まっていた。このため、本研究では、農業雇用労働力の地域的な需給調整システムの構築モデルを明らかにし、提示することを目的とした。しかし、研究期間内に労働力供給の逼迫が全産業的に進み、労働力需給調整の広域的取り組みが一般化してきた。すなわち研究者による先進事例の分析が広く社会の価値となる段階から、一般化が急速に進み、実務家が積極的に取り組む事例が多く見られるようになった。このため研究の重点方向を、先進事例としてのシステム構築の条件把握から、労働力不足の本質的要因を捉えた上で、地域としてどのように対応すべきか、といった方向へ修正した。残念ながら、韓国における実態調査は今年度も実施する事ができなかったため、最終年度は昨年度の内容を引き継ぎ、本質的な問題である、なぜ農業雇用労働力の不足は一過性のものでは無く、逼迫と緩和を繰り返す周期的発現が見られるのか、また農業雇用労働力の給源分析として、学生や障害者といった多様な担い手による援農・援農ボランティア等の取り組みについて調査を行った。最終年度の成果は現在論文および共著本の一部として刊行予定であるが、コロナ禍の影響を受け、スケジュールが遅れているため、本年度の成果報告には間に合わなかった。総合的な成果としては、労働力不足が全産業的課題となった今、農業分野のみで需給調整をすることは難しく、かつ地方部の主たる産業である農業が地域の存立について考えること無く、自身のみが生き残るために労働力を囲い込むことは不可能となった。このため、全産業的・本質的な意味で地域的な需給調整が求められており、そのシステムこそ現在喫緊の研究課題である事を発見した。次年度の新たな科研費研究において引き続き研究を進めていく。
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