研究課題/領域番号 |
18K14541
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
李 裕敬 日本大学, 生物資源科学部, 講師 (80736281)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 農村コミュニティビジネス / ソーシャルビジネス / 経営戦略 / 信頼関係 / パートナーシップ / 組織間関係 |
研究実績の概要 |
本研究では,韓国の農村におけるコミュニティビジネスを営む農業経営体の形成メカニズムについて,経営成長における経営戦略の視点から分析するとともに,地域の多様な主体との関係性の分析に基づき農村コミュニティビジネスの成立条件を明らかにすることを目的としている。今年度は,韓国でコミュニティビジネスが盛んな地域として有名な全羅北道完州郡を対象に,コミュニティビジネスに対する行政支援システムと実態についてヒアリング調査を行った。完州郡では2006年から2014年までの完州郡首が農村CBの政策事業化への意思が強く,その導入・定着にむけ,全国で初めて「農村CBの育成に関する条例(2009年)」を制定した。それに基づき中間支援組織である完州郡共同体支援センターを設立し,郡内の社会的経済分野の共同体に教育やコンサルティング,ネットワーク構築に関する支援を行っている。事例研究では優良事例として認定された安徳CBを対象事例として取り上げ,CB事業体が経営成長を遂げるなかで,組織内外の主体間における信頼関係がいかに形成され,維持・発展に結びついたか,その要因と課題を明らかにした。その結果,農村CBが発展を遂げる際,経営主体が事業に関連した行政,企業,住民といった利害関係者と協働活動を繰り返す中で主体間相互の信頼関係が増し,パートナーシップを維持していくことが検証された。また,こうした発展プロセスを辿ることができた要因としては,構成員の事業スキルアップと当事者意識の芽生え,マウル住民と円滑なコミュニケーションと事業収益の還元による信頼関係を構築,福祉事業などを通じた地域貢献への取り組みが挙げられる。これらヒアリング調査の取りまとめにより得られた結果については,令和元年度日本農業経営学会個別研究報告にて発表し,報告論文として投稿している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
韓国における農村コミュニティビジネスに対する政策支援体制や実態,今後の展開について関連文献および専門家に対するヒアリング調査により情報を収集した。その結果の一部については日本農業経営学会の個別研究報告で発表し,報告論文として投稿している。一方,今年度は事例調査を深めるとともに,コミュニティビジネスを営む事例を対象にアンケートを実施する予定であったが,日韓両国において新型コロナウイルスの感染が拡大したことから海外出張を中止する事態となったため,次年度に課題遂行を繰り越すことになった。現在,文献調査をさらに深めるとともに,現地調査に向けて情報収集やアンケート調査票の設計等に取り組んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度の夏季までに調査・分析した結果については学会等で発表および投稿したものの,年度末に予定していた韓国における現地調査が新型コロナウイルスの感染拡大の影響により実施できなかったため,予定していた課題遂行がやや遅れている。今後の情勢に合わせて,研究計画を調整しながら,2020年8月と9月に追加調査(構成主体間の社会的・地理的距離の範囲,作業範囲・経営範囲,事業内容とコミュニティビジネスが地域に与える機能,農村コミュニティビジネスへの契機,農作業の効率化,他作物の導入,追加収入源の確保等について)を行い,年度内に調査データを取りまとめ,類型別の成長プロセスと特徴、これらの類型間の差異等を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月下旬から3週間の日程で,韓国における現地調査を計画していたが,コロナウイルスの感染拡大により出張を取りやめることとなった。そのため,予定通りの調査が実施できず,本調査を次年度に繰り越すことになった。次年度(2020年)には夏と冬の本調査および春の追加調査を計画しており,計画通りに海外現地調査を実施することで今年度未使用額と次年度使用額を執行する予定である。
|