研究課題/領域番号 |
18K14544
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鬼塚 健一郎 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (90559957)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 集落機能 / ICT / システムダイナミクス / システマティックレビュー / ソーシャル・キャピタル / アンケート調査 / 地域意識 / 地域参加 |
研究実績の概要 |
本研究の大きな目的は、ソシオテクニカルシステムアプローチを取り入れ、地域社会とICTの最適なバランスにより、失われつつある集落機能を維持・回復させる新たな農村計画手法を確立することである。令和3年度は、前年度までに構築した人口変動を元にしたシミュレーションモデルのさらなる改良に取り組んだ。具体的には、以下の3つの視点から研究活動を行った。 1)集落機能を構成する6つの要素に関連する日本国内の既往研究について、システマティックレビューの手法を用いて網羅的に抽出し、整理を行った。その結果、集落機能に関する研究の動向を整理することができた。さらに、選定された文献により得られた知見を踏まえて、前年度までに開発したシミュレーションモデルの改良を行った。本研究結果は、レビュー論文として現在執筆中である。 2)1)で得られた理論的なモデルについて、亀岡市宮前町神前地区を事例として、さまざまな住民に対するヒアリング調査を行い、その妥当性を検証した。さらに、ヒアリングにより得られた結果を踏まえて、モデルの改良を行った。 3)ICTが農村地域社会にもたらす影響を把握するために、亀岡市宮前町神前地区の全住民を対象としたアンケート調査を実施した。アンケート調査の設計では、ICTが社会に対してもたらす影響を扱った国際誌における既往研究をもとに、特にソーシャル・キャピタル、地域意識、地域愛着、地域参加に着目した。分析の結果、ICTの利用が活発な比較的若い住民は、地域に対する意識や行動・参加などが弱いのに対して、ICTを活発に使う高齢者は地域に対する意識や行動・参加が強いことなどが明らかとなった。本結果については、今後1)、2)で得られたシミュレーションモデルの改良に用いる予定である。また、本結果について、現在論文として執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の最終目的としては、地域社会(人)とICTの最適なバランスにより集落機能を維持・回復させる新たな農村計画手法を確立することが挙げられる。そのために、システムダイナミクスを用いたシミュレーションの作成を前年度までにも行ってきたが、今年度は、網羅的な文献レビューにより、人口動態以外の様々な要素を取り入れて大きく発展させることができた。さらに、理論的なモデルのみならず、ケーススタディを通じてモデルの妥当性を検証するとともに、地域の現状に合わせて改良を行うことができた。他方、ICTが農村地域にもたらす様々な社会的影響については、国内で検証した研究事例はほとんどみられない状況において、全住民を対象としたアンケート調査により新たな知見を得ることができた。 他方、当初の研究計画では、今年度までに実際のデータを取り入れてシミュレーションを実施することを目標としていたものの、新型コロナウイルス蔓延防止の観点で、高齢化率の高い農村地域でのデータ収集が十分にできなかったため、その点についてやや遅れがみられ、研究期間の1年間の延長を行うに至った。ただし、現在構築しているシミレーションモデルの内容自体は、当初計画していたものよりも、より網羅的かつ精緻なものができていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究の推進方策としては、昨年度までに構築してきたシミュレーションモデルについて、行政関係者や地域活動の実務者などの意見収集を行い、妥当性のさらなる向上を行う予定である。同時に、具体的なデータ収集を行い、システムダイナミクスを用いたシミュレーションの実行を行う。また、前年度に得られたシステマティックレビューとアンケート調査に関する研究結果について、それぞれ論文として執筆中であり、これらの投稿・国際誌における掲載を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が0より大きくなっているのは、新型コロナウイルス感染対策のため、農村地域でのデータ収集に大幅な制約があったことや、国際会議への参加が一切できなかったことで、旅費の使用がほぼなかったことが大きな原因である。次年度は、昨年度実施が困難であった現地でのデータ収集や、多様な関係者に対するヒアリングやワークショップ謝金などを支出する予定である。さらに、昨年度までに得られた研究結果に関する論文出版費に使用する予定である。
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