本研究では、A.集落機能の体系的な解明とICTによる機能の代替可能性の評価・予測、B.地域とICTの将来動向を踏まえたシミュレーションによる地域の持続性評価モデルの構築、C.ICTの導入に対する地域の受容可能性の分析、に取り組むことを予定していたが、新型コロナウイルス感染症の拡大防止のため、高齢者が大部分を占める農村集落での現地調査が困難な期間が長かったため、期間内にCまでは踏み込めなかった。 最終年度は、前年度までに実施した集落機能の持続性に影響を与える要因に関する因果ループ図の作成やシステムダイナミクスを用いたシミュレーションモデルの試験的な構築を踏まえて、第1に、追加で必要な要因を明らかにするための調査・分析を実施した。具体的には、全住民数が3名と持続性が危機的な状況にある山間集落において、様々なメディアの活用により豊富な関係人口・交流人口の力を得て集落を維持している事例を対象として、複数メディア間の相互作用(間メディア性)とその要因について明らかにした。他方、スマート農業技術が農村地域社会に及ぼす負の影響が政策的に考慮されないまま普及・開発が進められているという仮説を立証するために、国・地方の議会議事録を対象としたテキスト解析を実施し、仮説が正しいことを立証した。 第2に、期間全体における研究結果を踏まえて、5本の論文執筆(英文3本、和文2本)を行った。具体的には、中山間地域におけるインターネット利用とコミュニティ意識に関する研究(英文・投稿済み)、スマート農業政策に関する議会議論における内容の偏向性(和文・投稿済み)、中山間地域における交流ネットワークに間メディア性が果たす役割(和文・投稿準備中)、スマート農業教育が農村定住・就農に及ぼす効果(英文・投稿準備中)、集落機能維持に関するシステマティックレビューを通じた因果ループ図の構築(和文・投稿準備中)である。
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