土壌‐大気間のCO2フラックスを正確に測定することは、陸域環境や気候変動における土壌の役割を明確にするために重要である。土壌からのガスフラックス測定法の一つである勾配法には、土壌の拡散係数を土壌水分測定と拡散係数のモデルによって推定しなければならないという課題がある。そこで本研究では、土壌の非破壊測定法である音響インピーダンス測定を利用して拡散係数を推定する方法を提案し,推定精度を明らかにすることを目的とした。 音響測定用のステンレス製円筒容器(内径8.5cm、長さ2cm)に合わせてガス拡散係数測定装置を作製した。3~15%の所定の含水比に調整した鳥取砂丘砂を円筒容器に充填し、音響試験、通気試験、ガス拡散試験を行った。1つの調整含水比につき2~3個の試料を作製し、合計で32個の試料について調べた。土壌の音響モデルにしたがって、音響インピーダンスから通気係数を推定し、通気試験の結果と比較した。また、通気係数とガス拡散係数の関係を調べた。 鳥取砂丘砂の気相率は16~35%、通気係数は0.001~2.3 cm/s、ガス拡散係数は0.0004~0.03 cm2/sの値を示した。 通気係数の音響推定値xと通気試験結果yとの間にはy=0.39x^2.8(R2=0.97)のべき乗の関係が認められた。通気試験結果yと拡散係数zの間にはz=0.013x(R2=0.96)の線形な関係が認められた。そして、通気係数の音響推定値xと拡散係数zの間にはz=0.005x2.9(R2=0.98)の関係が認められた。音響測定は、拡散係数を0.001~0.03 cm2/sの範囲において、相対誤差10~50%程度で推定できると考えられる。この相対誤差は、拡散係数が大きいほど大きくなる。音響による土壌の非破壊測定がガス拡散係数の推定を通してガスフラックスの測定に応用できることが示された。
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