研究課題
2017年7月の九州北部豪雨災害では,3時間で約300から400mmの激しい降雨により,変成岩,花崗閃緑岩等からなる地質の谷壁で多くの崩壊が発生した。本研究では,多様な地質・土質背景を有し,急斜面での表層崩壊が多かった本災害を事例として,現地調査,室内実験等に基づき,崩壊の発生機構を検討するものである。平成32年度(令和2年)は以下の研究活動を実施した。これまでに採取した試料について,物性,リングせん断,せん断による透水性変化に関する室内実験を実施した。粒度試験(JIS法)により,奈良ヶ谷川斜面の滑落崖(変成岩)と乙石川斜面の滑落崖(花崗岩)からの採取土については,砂分多く,砂含有量(20-2000μm)がそれぞれ約25%と約60%であった。また,乙石川斜面の試料は,礫(>2000μm)が約30%であった。リングせん断実験について,奈良ヶ谷川斜面の滑落崖から採取した原粒度試料と425μmふるい通過試料を準備した。有効垂直応力100kN/m2の下で行ったリングせん断挙動では,<425μm試料でより明瞭なピークを示したものの,大変位せん断後の強度低下で定常状態に至った際にはほとんど同程度の摩擦係数を示していた。これは,風化によって細粒化が進んでいた場合においても,断層等のせん断面で発揮される強度は粒子サイズによらない可能性を示している。乙石川斜面の滑落崖から採取した原粒度試料について,せん断による透水性変化に関するリングせん断実験を行った。有効垂直応力の100kN/m2下でせん断を進めると,数百mmせん断後から透水係数が低下して,数千mmせん断後には約1/100となることが明らかになった。
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Tectonophysics
巻: 789(228521) ページ: 1-14
10.1016/j.tecto.2020.228521