研究課題/領域番号 |
18K14548
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
中村 大輔 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター, 研究員 (30728556)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 鳥獣害対策 / 市町村の対策 / サル / 合意形成 |
研究実績の概要 |
サルによる被害への対策支援の実施状況について,全国のサルが生息する市町村の鳥獣担当者を対象に,2回(2015年と2017年)に分けて実施された同一項目を用いたアンケートを解析し,以下の結果を得た。 i)加害サル群の生息状況モニタリングの実施状況には地域差があり,東北地方はモニタリング結果に基づく計画的な管理をおこなう自治体が多く,中国・四国地方は農家への被害防除支援を中心とした対策が実施される傾向にある。 ii)市町村で実施されている被害対策に関する研修会等の被害対策支援の実施タイミングと被害状況や被害の増減との関連を非計量多次元尺度構成法および相関分析により解析した結果,市町村担当者の被害増減に関する意識と実施タイミングは関連があり,被害が増加傾向にないと判断した市町村担当者は被害対策ソフト事業の当該年度の実施を控える傾向があった。 iii)被害対策の有効性については,被害の増減を目的変数とした決定木解析により,市町村側から住民への普及啓発に係る支援をしていない市町村は農業被害が減少しているとする回答が少ない傾向がみられた。また,銃器を用いた捕獲は被害の減少には寄与しない傾向があった。 また,鳥獣害対策として,近年普及しつつあるICTを用いた捕獲わなと従来型の捕獲わなの経営面における比較をおこなった。1頭あたりの捕獲に係る経費を効果とした損益分岐点を導出し,自治体担当者からみたICT機器の導入判断に係る一つの指針を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の目的は,(i)全国的な市町村がおこなうニホンザルによる被害への対策支援政策について,環境省自然環境局が2015年と2017年に全国の市町村を対象に実施した調査結果を用いて,マクロな視点からサル被害対策を評価すること。(ii)(i)で得られた調査結果から現地調査を実施するエリアを選定し,被害リスク等の客観的指標を用いた住民の被害対策合意形成モデルを構築することにある。 (i)についてはおおむね順調に取り組んでおり,文章化の目処がたっているが,(ii)については,(i)の解析に時間がかかってしまったこともあり,想定よりも準備に手間取っている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度が最終年度にあたるため,まずは全国的な調査の結果をとりまとめ,公表する。その結果から秋季に合意形成モデルに係る調査を実施するため,夏季は被害リスク解析を含めた現地調査の準備や住民への説明をおこなう。アンケートで対応すべき誤差を減少させるため,アンケ―ト調査の前には回答者が質問票の意図を取り違え,調査の信頼性が低くなる測定誤差に対応するため,対面式の調査を実施する。また,アンケート調査の後には回答があったデータのみを用いることによって調査に協力しなかった回答者の意識をくみ取れない無回答誤差に対応するため,無回答数の1割に該当する住民に対して追加調査を実施する。冬季にそれら結果をとりまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
現地調査の準備が進んでいないため,現地調査のための旅費に係る経費を次年度に繰り越すこととなった。今年度の使用計画としては,現地調査の準備のために滞りなく使用する予定である。
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