研究課題/領域番号 |
18K14552
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
森松 和也 愛媛大学, 農学研究科, 助教 (70746742)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 好熱性好酸性菌 / 芽胞 / 高圧処理 / 無機酸・有機酸 / pH |
研究実績の概要 |
本研究では、果汁飲料における好熱性好酸性菌芽胞の高圧処理を用いた新規殺菌技術に関する基礎的な検証を目的としている。平成30年度では中温中高圧処理による殺菌効果へ菌を懸濁したクエン酸ナトリウム(Na)溶液のpHが与える影響について調べた。令和元年度では、引き続き中温中高圧処理による好熱性好酸性菌芽胞の殺菌に関する研究を遂行した。 好熱性好酸性菌(Alicyclobacillus acidoterrestris)が形成した芽胞を対象として、中温中高圧処理(65 ℃・100 MPa・10 min)による殺菌効果へ菌懸濁液のpH(pH 3.5-5.0)が与える影響について、クエン酸Na溶液以外の溶液についても調べた。なお、本実験では、リン酸水素Na、DLリンゴ酸Na、酢酸Na、乳酸Naの各溶液を用いた。いずれの溶液においても、溶液pHが低いほど高圧処理による好酸性菌芽胞の殺菌が促された。また、好酸性菌芽胞への高圧処理による殺菌に対する無機酸・有機酸の違いによる影響を調べるため、同一pH(pH 3.5/5.0)の溶液間での殺菌効果について比較した。その結果、pHに関わらず、無機酸・有機酸の違いによる殺菌効果の有意な差は認められなかった。さらに、好酸性菌芽胞への高圧処理による殺菌に対する溶液濃度(0.015-308 mM)の影響を塩化Na溶液およびクエン酸Na溶液を用いて調べた。溶液種およびpHに関わらず、濃度の増加と共に殺菌は促されたが、77 mMまでの濃度増加で殺菌の促進は頭打ちとなった。一方、濃度がさらに増加すると殺菌効果が抑制される傾向が示された。そのため、溶質濃度が高い濃縮果汁等へ高圧処理による殺菌を適用した場合、殺菌効果が抑制される可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度では、平成30年度に引き続き、中温中高圧処理による好熱性好酸性菌芽胞の殺菌効果に菌懸濁液成分の影響を調べた。その結果、中温中高圧処理による好酸性菌芽胞の殺菌に対する菌懸濁液pHの影響、無機酸・有機酸成分の影響の違い、溶質濃度の影響について明らかにすることができた。また、中温中高圧処理による好熱性好酸性菌芽胞の殺菌効果に金属イオン種の違いが与える影響についても現在調査中であり、令和2年度ではその成果が報告できるものと考えられる。平成30年度の進捗報告では研究の遅れが生じたと記載していたが、以上のように本研究に注力したため、その遅れを取り戻せたものと考える。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の進捗状況・今後の方針に記載した高圧処理装置の修繕と移設について、令和元年9月に完了した。現在に至るまで、本装置の習熟と予備実験について行っており、令和2年度では本装置を用いた好熱性好酸性菌芽胞に対する高圧処理(>100MPa)による殺菌効果について調べていく。また、本年度の進捗状況に記載した通り、中温中高圧処理による好酸性菌芽胞の殺菌試験についても引き続き進めていく。
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