研究課題/領域番号 |
18K14554
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研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
安藤 泰雅 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 野菜花き研究部門, 研究員 (30736781)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 冷凍 / 野菜 / 細胞膜 / 電気インピーダンス解析 / 水透過性 |
研究実績の概要 |
本課題では、野菜組織中の細胞膜について電気的な解析手法による構造評価と水透過性評価を行い、凍結過程での氷結晶生成等の現象と細胞膜機能の変化との関係を解明し、凍結時の組織軟化に与える影響を明らかにすることを目的とする。本年度は、異なる凍結速度で凍結したアスパラガスおよびニンジン組織の細胞膜の構造的・機能的変化を電気インピーダンス解析の手法により調査した。測定した電気インピーダンスの周波数特性について細胞の電気的等価回路モデルを用いた解析手法を適用し、モデルを構成するパラメータである細胞膜容量、細胞外液抵抗および細胞内液抵抗の値を算出した。細胞膜容量は細胞膜の構造的な健全性を反映するパラメータであり、この値は凍結・解凍操作によって低下する傾向が見られた。また、凍結・解凍過程における細胞外液抵抗の低下および細胞内液抵抗の増加が見られ、電解質濃度の異なる細胞内外液を隔てている細胞膜の機能的変化に伴う、膜のイオンおよび水の透過性の変化が生じていると推察された。各パラメータの変化量に凍結速度による差異は見られず、凍結時における細胞膜の構造的・機能的変化は凍結速度に関わらず生じるものと考えられた。また、X線CTを用いた間接観察法により組織内に生じる氷結晶の形状を評価したところ、凍結速度が高くなるほど氷結晶は微細化・均質化する傾向が見られた。一方で、いずれの速度で凍結した試料でも凍結・解凍後の力学物性は凍結前の試料と比べ大きく変化し、特に弾性的な性質が大幅に低下しており、凍結速度による差異はわずかであった。これらの結果より、冷凍加工による野菜組織の力学物性変化の変化は、細胞膜の機能的・構造的損傷による膨圧の低下が大きな要因である可能性が示され、氷結晶の形状による影響は限定的であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は凍結プロセスにおける野菜組織の電気インピーダンス解析による細胞膜評価について重点的に実施し、凍結時の組織軟化と細胞膜の損傷に関係性を見出すなど重要な知見を得た。また、野菜組織内に生じる氷結晶の形状評価等、一部の内容については次年度以降の計画を前倒しで実施した。今後は細胞膜の水透過性評価等を中心的に実施していく必要があるが総合的な観点から概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は凍結プロセスにおける細胞膜の水透過性の評価を中心に研究を遂行する。野菜組織からプロトプラスト(植物細胞の細胞壁を酵素処理により除去したもの)を作製し、マイクロ流路を用いた手法により細胞膜の水透過性を数値化し、凍結温度帯における特性を評価する。また、実験試料についても異なる生育段階または品種等の野菜について検討し、細胞膜機能と凍結時の組織軟化特性の関係性について調査を進め、試料条件による冷凍耐性の違いに関する知見を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は電気インピーダンス解析による評価を重点的に実施したことにより、凍結温度帯における水透過性の評価については一部未実施であったため、次年度に本実験を行うための冷却水循環装置等の購入費約600,000円を繰り越した。
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