本研究では、冷凍加工に用いられる野菜組織中の細胞膜について電気的な解析手法(電気インピーダンス解析)による構造評価と水透過性評価を行い、凍結過程での氷結晶生成等の現象と細胞膜機能の変化との関係について調査することで、凍結時の生じる組織軟化の発生機序を明らかにすることを目的としている。本年度は、凍結温度域における野菜の細胞膜の構造的・機能的な変化について検討を行うため、試料としてコマツナを用い、凍結温度域である-2℃での保存試験を実施し、生鮮試料および完全凍結(-40℃)試料との比較を行った。-40℃で凍結した試料では氷結晶の生成による損傷によって明らかな葉の萎凋が認められ、電気インピーダンス解析でも細胞外液抵抗値が大幅に低下するなど顕著な細胞膜構造の損傷が示唆された。一方で、-2℃の凍結温度域で保存された試料では生鮮試料と比較し外観上は遜色のない状態が維持されていたが、細胞膜の電気容量に有意な差が確認され、構造的な変化が示唆されたものの水透過性に顕著な変化は見られなかった。本課題を通じて、冷凍野菜の組織軟化に関わる要因として凍結温度帯における細胞膜の構造的・機能的な変化について検討し、解凍後の力学物性、氷結晶の生成および水移動速度との関係を明らかにするとともに、野菜の品種間の差異についても新たな知見を得た。これらの組織軟化に関わる要因の理解は、食品の中でも冷凍適性が低いとされる冷凍野菜の品質改善に向けた有意義な知見になると考えられる。
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