今年度は、建築物エネルギーモデルEnergyPlusのソースコードを解析し熱収支計算のアルゴリズムを図示し、そこから得られるEnergyPlusの基本的な設計と、一般的な建築物(商業施設・オフィスビルや住居)と園芸施設の伝熱工学的相違、および既往研究の文献調査に得られた園芸施設の熱収支モデルの知見を統合し、園芸施設のエネルギー評価が可能なモデルを設計し、C++でコーディングし、プログラムを構築した。 EnergyPlusが想定している建築物と園芸施設の相違として、特に作物体の存在による床面への日射遮断と蒸散による潜熱の発生、壁体の放射透過性および結露が生じることによる透過性変化、床面が土壌であることによる床面での潜熱輸送の存在があげられるため、これらを新たにEnergyPlusのモジュールとして構築する必要がある。作物体の熱収支計算および蒸散量計算のモデル化には、Stanghelliniら(2019)によるBig-Leaf Modelを、壁面の放射透過や結露の影響のモデル化には1990年代から継続的に開発・利用が行われている園芸施設の熱収支モデルの一つであるGDGCM(Gembloux Dynamic Greenhouse Climate Model)を、また、土壌床における潜熱輸送のモデル化には、EnergyPlusの屋上緑化(EcoRoof)モジュールを参考とした。 上述の設計に基づきコーディングした園芸施設エネルギー評価プログラムを用いてシミュレーションを行うことで、EnergyPlusでは再現できなかった空間内の水分量変動や被覆面での結露の影響を再現することが可能となった。 また、本プログラムは一般建築を対象としたEnergyPlusをベースに開発されており、園芸施設に限らず農村地域のエネルギー地産地消のシステム設計に役立てられるものである。
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