研究実績の概要 |
本研究では、『飼料効率の間接指標としての酸素消費量(OC)による選抜の実態解明およびOCに関連する遺伝的指標の同定』を目的に、OCの高低にもとづく選抜系マウス集団を用いて、①量的遺伝学的手法によるOCの高低に対する核ゲノム遺伝およびミトコンドリア遺伝の影響度の調査および②全ゲノムシークエンシング結果を用いたOC関連遺伝子の探索を行った。まず、17世代にわたるOCの高低2方向選抜時に収集されたデータを用いて、ミトコンドリア遺伝(細胞質遺伝)の効果を含むアニマルモデルにより推定されたミトコンドリア遺伝効果の寄与率は0.03と非常に低く、ミトコンドリア遺伝の影響は小さいことが示唆された。一方、直接遺伝率は0.4前後の中程度の値が推定されたことから、本集団におけるOCの高低に関与する遺伝的要因は主に核ゲノム上に存在すると推察された(①の成果)。次に、OCの高低2系統の16世代目集団における冷凍尾部サンプルを用いたpool-seq法を用いて、系統間のアリル頻度の違いから核ゲノム上に存在するOC関連候補遺伝子の抽出を試みた。常染色体上に位置するもののうちFisherの正確確率検定によるp値がBonferroni補正で調整した閾値(0.05÷対象多型数≒1.2×10-8)を下回った多型の近傍に位置する遺伝子を、OC関連候補遺伝子として抽出した。抽出された遺伝子の中に、電子伝達系に関連する遺伝子が複数存在した。系統間でミトコンドリア機能に差のあることが報告されている(Darhanら, 2019, Animal Science Journal, 90:818-826)ことから、本研究で検出された遺伝子群はOCとの関連性が高いことが示唆された(②の成果)。
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