研究課題/領域番号 |
18K14568
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
實安 隆興 神戸大学, 農学研究科, 助教 (20721236)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | インスリン / IGF-1 / 骨格筋 / ニワトリ / Akt / S6 |
研究実績の概要 |
ニワトリ胚より採取した筋芽細胞を培養プレートに播種し、1、3、及び5日培養後に総RNAを抽出してIGF-1及び筋分化関連遺伝子(Pax7、MyoD、及びmyogenin)の発現量を解析した。その結果、培養1日目から3日目にかけて、上述の全ての遺伝子発現量が増加した。また、内部標準として用いられるハウスキーピング遺伝子(RPS17、βアクチン、18S、及びGAPDH)の発現量も増加した。また、培養3日から5日目にかけて、IGF-1、MyoD、myogenin、及びGAPDHの遺伝子発現量が減少した。次に、培養1日目にIGF-1 siRNAを添加し(対照群にはnon-targeting control siRNAを添加)、培養3日目に総RNAを抽出して種々の遺伝子発現量を解析した。その結果、IGF-1の遺伝子発現量の増加は抑制され、培養1日目とほぼ同レベルであった。また、その他の遺伝子発現量も増加せず、培養1日目とほぼ同レベルであった。これらのことから、筋芽細胞が産生するIGF-1は、筋分化関連遺伝子の発現促進に必須である可能性が示された。 エネルギー源が糖質、タンパク質、あるいは脂質のいずれかからなる試料をニワトリ初生びなに経口投与し、骨格筋中のAktとS6のリン酸化タンパク質量及びその割合を解析した。その結果、糖質試料の投与により、Aktのリン酸化の割合は増加したが、S6のリン酸化の割合に変化はなかった。一方、タンパク質試料の投与により、S6のリン酸化の割合は増加したが、Aktのリン酸化の割合に変化はなかった。脂質試料の投与では、いずれのリン酸化の割合も変化はなかった。これらのことから、飼料中の糖質とタンパク質が骨格筋のAkt/S6に及ぼす影響は異なる可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
計画を変更して、ニワトリ筋芽細胞を用いたin vitroの検討を前倒しで行ったが、AktやS6のリン酸化の割合を解析するに至らなかった。また、それにより、インスリン分泌能低下ニワトリを用いた検討を十分に行うことができなかった。 エネルギー源の違いが骨格筋のにおけるIGF-1の遺伝子発現量、及びAKtやS6のリン酸化の割合に及ぼす影響は、投与間隔や最終投与からサンプリングまでの時間が結果に影響することが明らかとなり、明確な結論を出すまでに至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ニワトリ筋芽細胞を用いたin vitroの検討により、siRNAによるIGF-1の発現抑制が細胞内のシグナル伝達因子(Akt、S6)のタンパク質量やそのリン酸化の割合を解析する。これにより、筋芽細胞や筋管細胞が産生するIGF-1が自身のAKt/S6経路(タンパク質合成調節の主要な経路)に及ぼす影響を明らかにする。 インスリン分泌能低下ニワトリを用いた検討を行うことにより、インスリンがニワトリ骨格筋におけるAktやS6のタンパク質量及びそのリン酸化の割合を解析する。これにより、インスリンが骨格筋のAkt/S6経路に及ぼす影響を明らかにする。 種々の栄養素が骨格筋のIGF-1 mRNA量、及びAktとS6のリン酸化の割合に及ぼす影響については、投与条件を再検討したうえで再現性を確認する。 これまでの研究により、骨格筋におけるIGF-1の遺伝子発現量は1週齢から2週齢にかけて減少することを明らかにしている。本研究ではこの要因を探索するため、1週齢及び2週齢 の骨格筋RNAを用いて、マイクロアレイ解析により遺伝子発現を比較し、発現量に差があった遺伝子の中からIGF-1の転写調節因子と推定される遺伝子を絞り込み、その遺伝子の発現量をリアルタイムPCRにより比較する。
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