研究課題/領域番号 |
18K14570
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
中村 隼明 広島大学, 生物圏科学研究科, 助教 (30613723)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | ニワトリ / 発生工学 / 精子幹細胞 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、現在著しく低いニワトリ精子幹細胞の移植効率を実用可能なレベルまで引き上げることである。我々はこれまでにマウスをモデルとして用いて、精子幹細胞の移植効率を引き上げるためには、宿主自身が保有する生殖細胞の除去に加えて、宿主生殖巣の環境を制御してドナー精子幹細胞の自己複製能を引き出すことが効果的であることを発見した。これらの発見に基づき、①効率的かつ効果的な生殖細胞除去法の開発、②ドナー精子幹細胞由来の精子だけを産生するキメラニワトリの作出、③レチノイン酸合成阻害を利用したニワトリ精子幹細胞の移植効率を向上させる技法の開発、によって目標達成を目指す。 ①効率的かつ効果的な生殖細胞除去法の開発: 放卵直後のニワトリ胚にアルキル化剤であるブスルファンを100μgずつ投与することによって、初期胚生殖巣における内在性生殖細胞がほとんど完全に除去された。しかし、精細管内移植する時期に相当する6ヶ月齢では配偶子形成が再生している個体が一部で認められた。 ②ドナー精子幹細胞由来の精子だけを産生するキメラニワトリの作出: 全身性にGFPを発現する遺伝子導入ニワトリを作製するために、ニワトリ始原生殖細胞を培養・株化に取り組んだ。これまでに白色レグホーンならびに横班プリマスロックの始原生殖細胞の株化に成功した。 ③レチノイン酸 (RA) 合成阻害を利用したニワトリ精子幹細胞の移植効率を向上させる技法の開発: マウスからヒトとまで多くのほ乳類において精巣特異的に作用する可逆的なRA合成阻害剤WIN18,446の作用性をニワトリで検討した。その結果、精巣の組織形態に変化はなく、これまでのところWIN18,446の作用性は認められなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究において使用したニワトリ始原生殖細胞の培養液は特注であり、製造・納品に時間を要した。これに伴い、始原生殖細胞への遺伝子導入が予定より遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年度には以下のように研究を推進する。 ①効率的かつ効果的な生殖細胞除去法の開発: X線あるいはガンマ線照射による内在性生殖細胞の除去に取り組む。この他にも、遺伝子改変技術を利用した生殖細胞の除去個体の作出に挑戦する予定である。 ②ドナー精子幹細胞由来の精子だけを産生するキメラニワトリの作出: 始原生殖細胞への遺伝子導入により、恒常的にRFPを発現する遺伝子導入ニワトリを作出する。このニワトリより調整した生殖細胞を、①で作出した宿主ニワトリに移植する。宿主ニワトリの精子形成を、RFPの発現と組織形態を指標に評価する。 ③レチノイン酸 (RA) 合成阻害を利用したニワトリ精子幹細胞の移植効率を向上させる技法の開発: 2018年度に引続き、精巣特異的に作用する可逆的なRA合成阻害剤WIN18,446の作用性をニワトリで検討する。WIN18,446を様々な濃度で投与し、精巣の組織形態を指標に作用性を評価する。
|