研究実績の概要 |
本研究の目的は、現状極めて低いニワトリ精子幹細胞の移植効率を実用可能なレベルまで引き上げることである。我々はマウスをモデルとして用いて、精子幹細胞の移植効率を向上させるためには、宿主精巣の内在性生殖細胞の除去に加えて、宿主生殖巣の環境を制御してドナー精子幹細胞の自己複製を誘導することが重要であることを見出している。これらの発見に基づき、①効率的かつ効果的な生殖細胞除去法の開発、②ドナー精子幹細胞由来の精子だけを産生するキメラニワトリの作出、③ALDH1A2の阻害によるニワトリ精子幹細胞の移植効率を向上させる技法の開発、によって目標達成を目指す。 ① 効率的かつ効果的な生殖細胞除去法の開発: 放卵直後のニワトリ胚にアルキル化剤であるブスルファンを100μgずつ乳化液を用いて投与することにより、初期胚生殖巣における内在性生殖細胞がほとんど完全に除去された。 ② ドナー精子幹細胞由来の精子だけを産生するキメラニワトリの作出: 全身性にGFPを発現する遺伝子導入ニワトリを作製するために、ニワトリ始原生殖細胞を培養・株化し、配偶子への分化能の検討に取り組んだ。その結果、機能的な配偶子への分化能を維持した始原生殖細胞の培養株を樹立することに成功した。 ③ ALDH1A2の阻害によるニワトリ精子幹細胞の移植効率を向上させる技法の開発: ほ乳類において精巣特異的に作用する可逆的なALDH1A2阻害剤WIN18,446を多様な濃度で投与して、その作用性をニワトリで検討した。その結果、精巣の組織形態に変化はなく、WIN18,446の作用性は認められなかった。
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