研究課題/領域番号 |
18K14583
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
鎌田 麻実 (上村麻実) 東京医科歯科大学, 統合研究機構, 非常勤講師 (20596001)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | マウス / ラット / ヒト疾患モデル / 胆道閉鎖症 / 比較解析 / 胆管系発生 |
研究実績の概要 |
申請者の以前の研究から、ラットでは発生初期に胆嚢予定領域でSOX17の発現が維持できず、胆嚢原基が消失することが示唆されている(Uemura et al. unpublished data)。また、ラットとマウスの胚盤胞置換法による先行研究(Kobayashi et al. Nihon Rinsho 2010)において胆嚢のないラット型になるための条件は周囲の環境であることが報告されているほか、ラットとマウスでは胆嚢予定領域周囲に存在する間葉組織の分布パターンに違いがあることが報告されている(Higashiyama et al. J Anat 2017)。以上から、ラットにおける胆嚢原基の消失の原因を、周囲の環境と細胞自律的な要因の2つの方向から探索するために、当該年度は細胞自律的な要因の探索に絞りラットとマウス、ヒトの間でのSOX17比較ゲノム解析を実施し、ラット特異的なシスエレメントを同定した。今後、この候補領域の欠失変異体(CRISPER-Cas9)を作出し、胆嚢特異的なSox17発現制御領域を明らかにする予定である。 さらにヒト先天性胆道閉鎖症(BA)の治療や予防法の確立を目指し、当該年度は前年度に引き続き、ヒトBA患者での胆嚢を含む肝外胆管の病態について、コントロール群を追加し、疾患モデルマウス(Sox17 +/-マウス)と比較した結果、一部のヒトBA患者でも胆嚢上皮のSOX17の発現低下が認められ、Sox17 +/-マウスと同様の病態を辿る可能性を見出した(Uemura et al. DMM 2020)。このように、Sox17は脊椎動物間で保存された胆管系発生のマスター制御因子であるため、胆管系におけるSox17の発現維持機構の解明がヒトBAの治療応用への礎となるであろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
細胞自律的な要因の探索に関しては、順調に進行している。一方、周囲の環境の探索に対しては手技的な問題などの観点から、別の手法(間充織の欠損マウスなど)を用いて間充織-胆嚢上皮の相互作用を解析する予定である。また、当該年度(前年度に引き続き)はヒトBA患者での胆嚢を含む肝外胆管の病態について疾患モデルマウスと比較した結果、胆嚢上皮におけるSOX17の発現低下や傍胆管腺の増加などBA特有の病態を見出し、これらの成果を社会的に発信した(Uemura et al. DMM 2020)。
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今後の研究の推進方策 |
今年度はヒトBA疾患モデルとして有用なSox17+/-マウスと胆嚢/胆嚢管を欠くラットの分子メカニズムの比較解析を用いて、 1)細胞自律的な要因の探索:前年度に特定した候補領域の欠失変異体を作出し、表現型解析 2)周囲の環境の探索:新たに間充織の欠損マウスなどを用いて間充織が胆嚢上皮に及ぼす影響 3)マウスとラットの胆嚢予定内胚葉領域のSingle Cell RNA Sequenceもしくは、胆嚢上皮のATAC-Seqを用いた解析 を実施することにより、肝外胆管におけるSox17の発現維持機構および胆道閉鎖症の発症機序の解明を目標とする。
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