研究課題
令和2年度はヌードマウス(Balb/cAJcl-nu/nu)を用いたTrimethyltin(TMT)投与脳組織再生モデルを作製し、その脳組織再生を詳細に解析した。ヌードマウスは成熟Tリンパ球を欠損する免疫不全動物として知られる。正常な免疫系をもつマウス(Balb/cAJcl)と比較すると、TMT投与7日後の時点でヌードマウスでは尾懸垂試験における無動時間の短縮が認められ、脳機能の改善が示唆された。さらにヌードマウスでは、免疫組織学的に、海馬歯状回のNeuN陽性成熟神経細胞の増数が確認された。また、歯状回におけるDCX陽性未成熟神経細胞の増数が見られたことから盛んな神経新生が生じていると考えられた。加えて、神経栄養因子の1つであるBDNFの発現について免疫組織学的に検討すると、歯状回周囲のGFAP陽性アストロサイトにおけるBDNF発現の増加がヌードマウスに認められた。以上の結果から、Tリンパ球を欠くヌードマウスにおいては、アストロサイトにおけるBDNF発現が増加することで、盛んな神経新生が生じ、脳組織の再生が促進されると考えられた。すなわち、Tリンパ球はアストロサイトに働きかけ、BDNF発現を抑制し、脳組織の再生を阻害すると思われる。
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