昨年度に引き続き酪酸塩補給によるGLP-2分泌調節が、消化管炎症抑制効果に及ぼす影響について検討を行った。酪酸塩を4週間にわたり長期給与した結果、ルーメン絨毛の長さが伸び、絨毛の炎症関連遺伝子(TLR4、IL1β、IL6)の発現量が低下することが明らかとなった。一方で、酪酸塩の補給はルーメン内エンドトキシン濃度を高める結果となり、微生物叢に影響を及ぼしていることが示唆された。酪酸給与条件下で人工的にルーメンアシドーシスを引き起こす処理を行ったところ、ルーメンpHは酪酸給与区でコントロール区と比べて低くなったが、フン中のpHの低下は抑えられ、フン中に排泄される未消化デンプン濃度が低くなることが明らかとなった。ルーメンアシドーシス処理による炎症反応はLPS結合タンパク質の血中濃度によって評価されたが、両区の間に有意差は見られなかった。これらのことを考察すると、酪酸の給与はルーメンおよび小腸におけるデンプン消化を高めることによって未消化デンプンの大腸流入を抑え大腸アシドーシスを抑える効果がみとめられたが、ルーメンpHの低下抑制効果やエンドトキシン濃度の増加抑制効果には逆効果がみられたため、炎症反応に好適な効果がみられなかったことが示された。
|