研究実績の概要 |
中枢神経組織の障害は、永久的な運動・感覚機能障害を引き起こし、重篤な場合は死に至る。近年、幹細胞移植による中枢神経の機能再生が試みられているが、有効な治療法は確立されていない。本研究で、申請者は脱分化脂肪細胞に注目した。脂肪から得られ、生体外での増殖能を持つため、再生医療の細胞源として期待されている。しかしながら、脱分化脂肪細胞の神経リプログラミングはヒトやマウスでも報告されていない。申請者は、イヌの骨髄間質細胞および脱分化脂肪細胞の神経リプログラミングについて研究を進めてきた(Nakano et al., PLOS ONE, 2020, Nakano et al., PLOS ONE, 2015, Nakano et al., J.V.M.S., 2015, Nakano et al., A.J.V.R., 2013)。また、脳で発現するJNKサブタイプであるJNK3が神経リプログラミングに重要であることを明らかにし、総説を発表した(Nakano et al., Cells, 2020)。本研究では、ヒト脱分化脂肪細胞の神経リプログラミングの達成を目的として研究を行った。 前年度は、見出したヒト脱分化脂肪細胞の神経リプログラミングに関与する因子をベースにヒト脱分化脂肪細胞の神経リプログラミングシステムを開発した。今年度は、細胞の神経機能について詳細な検討を行った。カルシウムイメージングを行い、高濃度塩化カリウム刺激誘発性のカルシウム流入を確認した。また、神経伝達物質誘発性のカルシウム流入も確認した。今後は、さらに詳細な電気生理学的機能解析を行い、ヒト脱分化脂肪細胞の神経リプログラミングシステムを確立するとともに、メカニズム解明についても研究を進める予定である。
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