研究課題
昨年度の研究においてイヌ乳腺癌細胞における発現が見出された長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)の一つであるH19について、下記の通りin vitro実験によりその機能を解析した。まず、H19を高発現するイヌ乳腺癌細胞株CIPpに、イヌのH19 lncRNAと相補的な配列を有するsmall interfering RNA (siRNA)あるいはネガティブコントロールのsiRNAを導入し、real-time RT-PCRによりH19発現が効果的にノックダウンされていることを確認した。次に、それらの細胞を用いてBoyden chamber assayを行った。すなわち、無血清培地で調整した細胞浮遊液をBoyden chamberの上層のウェルに播種し、24時間後にウェルの底部のフィルターの開いた小孔を通って、血清添加培地が満たされた下層のウェル側に遊走した細胞数をカウントした。その結果、H19ノックダウン細胞の遊走細胞数はコントロール細胞に比べて統計学的に有意に減少した。さらに、同じ細胞を用いてCell tracking assayを行った。顕微鏡撮影装置で細胞の動きを5分おきに24時間撮影し、画像解析ソフトを用いて細胞の動きを追跡し、平均の移動距離を算出した。その結果、H19ノックダウン細胞の移動距離はコントロール細胞に比べて統計学的に有意に短いことがわかった。このように、本研究によりH19はイヌ乳腺癌細胞の遊走能に関与している可能性があることが明らかになった。
3: やや遅れている
細胞実験は非常に順調に実施され、想定通りの結果を得られている。細胞実験と同時に行われている組織学的解析については、tissue microarrayの作製が問題なく完了したものの、それを用いて行うin situ hybridizationの染色性が不良で、現在いくつかのプローブを用いて条件検討を行っているところである。
上記に記載した通り、in situ hybridizationの進捗が芳しくないが、いくつかのプローブを用いて条件検討を行っても染色性が悪い場合はキットの変更も考えている。イヌ乳腺癌細胞の長鎖ノンコーディングRNAのmicroarryについてはすでに一部は実施済みであり、結果の解析を進めるとともに新たな細胞、組織でも実施する。細胞実験については順調に進んでおり、引き続きH19がイヌ乳腺癌細胞の機能に果たしている役割について解析を進める。
In situ hybridization実験の進捗が遅れたため、未使用額があるが条件検討を進め今年度使用する予定である。また昨年度のlong non-coding RNA microarrayの実施検体数が予定より少ないが、これも今年度に繰り越した予算で実施する予定である。
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Veterinary Pathology
巻: 56(3) ページ: 389-398
10.1177/0300985818823772