研究課題/領域番号 |
18K14597
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
吉村 久志 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 講師 (70645241)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 長鎖ノンコーディングRNA |
研究実績の概要 |
イヌの高悪性度乳腺癌細胞株であるCIPpと低悪性度乳腺癌細胞株である17-442細胞において発現するmRNAおよび長鎖ノンコーディングRNAについて、次世代シークエンサーにより網羅的に検出したデータを解析した。尚、CIPpは東大獣医外科学研究室でイヌの乳腺単純癌から樹立された細胞株で、細胞接着性が低く、単細胞遊走能が高い。一方で、17-442細胞は当研究室においてイヌの乳腺複合癌から樹立した細胞株で、細胞接着性が高く、単細胞遊走能が非常に低い細胞株である。その結果、mRNAでは精子の形成に重要な役割を果たすことが知られるSpermatogenesis-associated protein 6 (SPATA6)遺伝子や、細胞骨格に関連する膜結合蛋白の一つであるMAGUK p55 subfamily member 2蛋白をコードするmembrane palmitoylated protein 2 (MPP2)遺伝子が、低悪性度乳腺癌細胞株17-442に比べて高悪性度乳腺癌細胞株CIPpで高発現していることがわかった。また2つの新規長鎖ノンコーディングRNAおよび2つの新規TUCP (transcript of unknown coding potential)が、低悪性度乳腺癌細胞株17-442に比べて高悪性度乳腺癌細胞株CIPpで高発現していることがわかった。今後はこれらのRNAがイヌの乳腺癌において果たしている役割を解明することで、新たな治療標的分子の候補になるか検証していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
次世代シークエンサーによる解析については順調に進んでいるが、昨年度から課題になっていたイヌの乳腺腫瘍における長鎖ノンコーディングRNAの一つであるH19のin situ hybridizationによる検出については、いくつかのプローブやキットを試したがうまくいかなかった。
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今後の研究の推進方策 |
イヌの乳腺腫瘍におけるH19の役割について引き続き細胞実験などにより解析を進めていくとともに、今回の次世代シークエンサー解析により高悪性度乳腺癌で発現していることが初めて明らかになった新規長鎖ノンコーディングRNAについても、その機能を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍で実験を行えない期間があったことと、in situ hybridizationの結果の遅れから一部の実験を後回しにしたため次年度使用額が発生した。今年度中に予定通りの実験を実施し、予算を使用する予定である。
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