研究課題/領域番号 |
18K14601
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
岡 香織 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 研究員 (50755907)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ハダカデバネズミ / 核内受容体 / 遺伝子変異 |
研究実績の概要 |
本研究では、ハダカデバネズミにおいて見出した新規の核内受容体遺伝子変異が生体にどのような影響を与えているかを解明することを目的とする。 本年度はまず、ハダカデバネズミにおける変異型受容体のin vitroでの機能解析を行うため、293T細胞に変異型受容体の過剰発現を行った際に野生型受容体の転写活性及び遺伝子/タンパク質発現が影響を受けるかを調べた。核内受容体応答配列を用いたレポーターアッセイの結果、変異型受容体の共発現により野生型受容体の転写活性が上昇することがわかった。一方で、変異型受容体の有無によって、野生型受容体の遺伝子レベル・タンパク質レベルでの発現量に差異は認められなかった。当該受容体はリン酸化やユビキチン化により活性や安定性が変化することから、翻訳後修飾への影響について検討を進める。 また、生体における変異型・野生型受容体の組織特異的な発現パターンを明らかにするため、公共データベースに登録されている各種組織のトランスクリプトームデータを活用し解析を行った。ハダカデバネズミのゲノムデータが不完全であるため当該受容体の遺伝子配列が欠落しているという問題点があったが、ゲノム配列を必要としない解析手法を立ち上げることで、組織ごとの発現量の推定が可能となった。 さらに、ハダカデバネズミとそれぞれ分岐年代が異なるダマラランドデバネズミ、モルモット、ラット、マウスの4種について公共データあるいは組織由来RNAを用いて、核内受容体遺伝子の重複あるいは変異が生じているかを検討し、遺伝子変異がハダカデバネズミ特異的であることを支持する結果を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はin vitroにおける核内受容体遺伝子変異の機能解析を実施し、変異型受容体が野生型受容体の転写活性化に寄与することを明らかにした。また、公共データを活用し、核内受容体遺伝子の発現パターン及び種特異的変異を解析する解析系を立ち上げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
変異型受容体がどのような機構で野生型受容体の転写活性に影響するのかを明らかにするため、活性化に伴う翻訳後修飾にとくに着目し、ウェスタンブロットによる解析を行う。また、変異型受容体がナンセンス変異依存mRNA分解機構による分解を受けている可能性について検討を行う。ハダカデバネズミの内在性受容体を検出可能な抗体は存在しないことから、抗体の作製ないしRNA in situ hybridizationにより対応する。またハダカデバネズミ細胞株を用いて核内受容体標的遺伝子の発現が変異型受容体により調節されるかを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品について複数業者から相見積もりを取ったところ、予定していた金額より低価格で購入することができた。差額については、研究の発展により消耗品購入費が増加する可能性があるため、消耗品費に組み込んで使用する。
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