研究課題/領域番号 |
18K14604
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
梶 典幸 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (20779318)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | カハール介在細胞 / 一酸化窒素 / 消化管 |
研究実績の概要 |
本研究は一酸化窒素による消化管ペースメーカー細胞であるカハール介在細胞の生存と障害のシグナルを明らかにすることを目的としている。本年度は一酸化窒素の曝露量がカハール介在細胞の生存と障害を決定する因子であるという作業仮説の元に検証を行なった。 消化管筋層由来の培養細胞塊に対して一酸化窒素ドナーを無処置、低濃度、高濃度で処置し、カハール介在細胞のネットワークを免疫染色により検討した。その結果、無処置に比べて低濃度処置ではカハール介在細胞のネットワーク量が多い傾向があった。また高濃度処置ではこのネットワークが減少している傾向を示した。以上の結果から、一酸化窒素曝露量により、生存と障害のシグナルが制御されている可能性が示唆された。 マウス生体における一酸化窒素の曝露量の違いがカハール介在細胞ネットワーク量に及ぼす影響を検討するために、一酸化窒素合成酵素阻害剤であるL-NAMEおよび一酸化窒素合成促進を促すL-シトルリンを処置し、免疫染色により検討を行なった。その結果、胃体部におけるカハール介在細胞ネットワークは一酸化窒素合成阻害により減少し、合成促進により増加傾向を示した。一方、小腸では有意な差は認められなかった。また、結腸においては投与一週間ではL-NAMEによりネットワーク量の増加傾向を示したが、その後は大きな変化は認められなかった。以上の結果から、一酸化窒素量によりカハール介在細胞ネットワーク量が変化することが示されたが、その影響は消化管の部位によって差があることが示された。 以上の結果より一酸化窒素に曝露量がカハール介在細胞の生存と障害のシグナルを制御している可能性が示唆されたが、部位による感受性の差も認められたことから、さらなる詳細な検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は一酸化窒素の曝露量とカハール介在細胞の生存または障害の関係性を示すことを目標としており、更なる検討が必要ではあるものの、概ね達成できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
健常個体の消化管において一酸化窒素は神経由来であると考えられる。そこで組織学的な検討を行なうことで、一酸化窒素作動性神経とカハール介在細胞の位置関係を明らかにし、一酸化窒素合成阻害・促進薬に対する消化管部位依存的な反応性の違いについて考察を行なう。 一酸化窒素の下流シグナルとしてcGMPを介した経路とS-ニトロシル化を介した経路が考えられる。そこで、これらのシグナルがカハール介在細胞の増殖や細胞死に及ぼす影響を培養系を用いて検討する。これらのシグナルでなかった場合はRNA-seq解析を行い、増殖や細胞死にかかわる遺伝子の変動を調べ、候補となるシグナルを検討する。 老化すると消化管筋層における一酸化窒素作動性神経の数が減ることが報告されている。そこで、老化マウスにおけるカハール介在細胞ネットワーク量を検討する。このとき、これまでに得られた部位差が同様にみられるか検討することで、部位によるカハール介在細胞の一酸化窒素依存性の違いについて考察する。
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