本研究は本研究は一酸化窒素による消化管ペースメーカー細胞(ICC)の生存と障害の詳細なシグナルを明らかにすることを目的としている。 前年度までにNO合成阻害時にはアペリン受容体の発現が低下することが明らかとなった。そこで、本年度はアペリンがICCの恒常性維持における役割を検討した。まず、消化管運動に及ぼす影響をマグヌス法を用いて検討した。その結果、ex vivoにおけるアペリンの急性処置は胃体部および空腸の自発性収縮に影響を及ぼさなかった。したがって、アペリンは消化管運動には関与していないことが示唆された。次に、小腸由来細胞塊を用いて、アペリンがICCネットワーク量に及ぼす影響を検討した。その結果、アペリンの処置はICCネットワークの量を変化させなかった。今後、NO合成阻害を行った培養細胞塊およびマウスに対して、アペリンを補充することでICCネットワークの減少が抑制できるかを明らかにする。 本研究により、ICCは1)高濃度NOへの暴露によりICCの細胞死が引き起こされること、2) 低濃度NOへの暴露によりICCネットワーク量の恒常性が維持されていることが明らかとなった。しかし、NO下流で産生されるcGMPは無刺激時の消化管筋層のICCにほとんど発現していなかったことから、低濃度NOはICCに直接作用しているのではなく、他の細胞種を介して間接的にICCの恒常性維持に関与する可能性が示唆された。また、NOによる生存シグナルにはアペリンが関与している可能性が見出された。
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