研究課題/領域番号 |
18K14607
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
矢田 紗織 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (50733896)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | オキシトシン / 共感性 / 自閉症スペクトラム障害 / 平原ハタネズミ / CRISPR/Cas9 |
研究実績の概要 |
本研究は、オキシトシン(Oxt) とオキシトシン受容体(Oxtr)が制御する共感性の神経回路の解明を目的としている。共感性は社会行動のために重要な精神機能である。Oxtは分娩や乳汁射出などに重要なホルモンとしてよく知られているが、近年は神経伝達物質として様々な社会行動との関連について注目されている。精神疾患の社会性障害の病状理解や治療薬開発のためにもOxt/Oxtr系による共感性・社会性の神経制御機構の解明が求められている。本研究では、一夫一妻制という高い社会性を持つモデル動物として近年注目されているげっ歯類である、平原ハタネズミを主に使用している。平原ハタネズミは遺伝子操作が困難とされていたが、研究代表者らは随一の生殖工学技術とCRISPR/Cas9によるゲノム編集技術を応用することで遺伝子組換え(Oxtr KO)平原ハタネズミを作製することに成功した。遺伝子組換え平原ハタネズミは世界初の試みであり、マウスやラットより高度な社会性を示す新たなモデル動物として研究への多彩な応用が期待できる。研究代表者らはこれまでにOxtr KO平原ハタネズミにおいて社会新奇性や固執性に異常が認められたことを報告した [Horie et al. 2018]。また社会性・共感性行動に関与している脳領域を中心とした投射元・投射先を特定し、社会性の神経回路の一部を明らかにしてきた。しかし本年度は研究代表者が産休および育休で研究を中断した期間が長く、また復職後も新型コロナウイルスにより研究環境にも変化があったため、実験データの進捗は遅れている現状である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
研究代表者は前年度の冬から本年度の秋まで産後休暇および育児休業を取得していた。よって本年度は復職後の数ヶ月間のみの報告となるため、学会発表等もなく、研究の進捗は「遅れている」。復職後まずは研究生活のリズムを立て直し知識の再インプットに努めた。また新型コロナウイルスによって研究環境にも影響があり、対応に追われた。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの感染状況が今後どのように研究環境に影響するかはまだ未知数であるが、研究代表者が育休より復職したため、次年度は論文投稿へ向けて最終データの収集とまとめを行う予定である。共同研究者とオンライン会議を密に進めながら、執筆作業を開始する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の産休・育休取得によって研究進捗に遅れが生じた。更に新型コロナウイルスによって研究環境にも影響が生じたため、研究期間を延長申請し、助成金も繰り越すこととした。次年度に残りの助成金を使用して研究を進める予定である。
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