研究課題/領域番号 |
18K14613
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
中村 和臣 鳥取大学, 医学部, 特命助教 (90598137)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 着床前胚 / ラット / 酸化ストレス / エネルギー代謝 / アミノ酸代謝 / DNA損傷 |
研究実績の概要 |
実験動物のラットは、着床前胚の体外培養が難しい。ラット胚の体外培養において、その発生を抑制している要因とメカニズムを探り、ラットの着床前胚の体外発生と着床後の発生(出生)を高効率化する体外培養法を確立したい。いくつかの動物種において、エネルギー代謝、酸化ストレス、アミノ酸代謝が胚の着床後の発生に影響を及ぼすという報告がある。本年度は、ラットの体外培養胚の発生に悪影響を及ぼしている因子を探るために、酸化ストレス、エネルギー代謝、アミノ酸代謝を解析することを計画した。 体外発生したラット胚をDHE染色することにより、DNAの酸化状態を観察した結果、培地中のアミノ酸により酸化状態が変化することを見出した。このことから、少なくとも、体外培養したラット胚は、培地中のアミノ酸によって、DNAの酸化状態に影響を受けることがわかった。一方、ラット胚のDNAの断片化状態をコメットアッセイにより検出した結果、体外発生した胚のDNAは、体内発生した胚よりも断片化が進んでいた。このことは、ラットの体外培養胚の着床後の発生を抑制している一つの要因ではないかと考えられる。さらに、培地中のアミノ酸組成を変化させることにより、体外発生胚のDNAの断片化を軽減させることがわかった。これらのアミノ酸によるDNAの断片化軽減効果とDNAの酸化状態の変化に関連性が存在するのかどうかが興味深い。 ラット胚のミトコンドリアにおけるROSの産生を観察した結果、体内発生胚と体外発生胚において、そのROSの産生に差があることがわかった。これは、体外発生胚と体内発生胚のエネルギー産生に違いがある可能性を示唆している。 また、ラット胚を体外培養した培地をHPLCに供することにより、培地中のアミノ酸の増減を分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画していたラット胚における酸化ストレス、エネルギー代謝、アミノ酸代謝の分析実験はおおむね終了し、それぞれの関連について解析中である。本年度に得られた知見の一部は、第66回日本実験動物学会総会にて発表予定である(タイトル:体外培養したラット受精卵のDNA損傷, 2019年5月15日~17日)。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に得られたデータから、体外培養したラット胚においては、酸化ストレスやエネルギー代謝がその発生に関与している可能性が示唆された。さらに、培地中のアミノ酸が、胚の酸化ストレスに影響を与える可能性があることがわかった。特に、体外発生したラット胚と体内発生したラット胚では、エネルギー産生に違いがある可能性が示唆され、興味深い。このことが、ラット胚の発生を抑制している要因とメカニズムを探りラット胚の体外発生と着床後の発生(出生)を高効率化するという本研究の目的に繋がるのではないかと予想している。したがって、今後は、特にラット胚のエネルギー産生に焦点を当てて、ラット胚の発生を抑制するメカニズムとの関連性を探りたい。
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