研究課題/領域番号 |
18K14614
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
片岡 太郎 熊本大学, 生命資源研究・支援センター, 特定事業研究員 (10782419)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | Myo10 / 破骨細胞 |
研究実績の概要 |
海綿骨量の制御に関わる遺伝子Myo10の生体における役割を明らかにすることが本研究の目的である。すでにMyo10ノックアウトマウス(Myo10-KO)が「海綿骨量低下」と「脛骨伸長不全」を示すことは分かっていたが、どの組織・細胞におけるMyo10の発現がこれら表現型を引き起こすかは不明であった。そこで骨化が始まる胎生期13.5日以降のMyo10の発現解析、Myo10欠損が軟骨性骨化へ与える影響を調べた。 Myo10遺伝子トラップマウスを用いた抗β-gal抗体染色によるMyo10発現解析ではMyo10が脛骨一次海綿骨・成長板境界に発現が局在することが明らかになった。Myo10は破骨細胞で発現することが明らかになっているが、この結果は生体ではすべての破骨細胞でMyo10が発現しているわけではなく、一部のサブタイプ、特に骨伸長などに関わる血管関連破骨細胞にのみ発現している可能性が示された。この発現解析結果は上記のKOマウス表現型の原因と生体内におけるMyo10の役割を考える上で非常に重要であるため、β-gal陽性細胞の種類の同定に取り組んでいる。 表現型解析に加え、MYO10タンパク質の構造からも機能解析を行った。Myo10は複数のタンパク質結合ドメインを持ち、尾部FERMドメインは細胞により異なる相手と結合することがわかっている。そこで共益因子から生体におけるMyo10の機能を明らかにできないかと考え、まず最もMyo10の発現が高い破骨細胞における共益因子の探索を行った。現在、プルダウンアッセイによって得られた候補タンパク質の質量解析を行っており、近くその共益因子が同定できる予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Myo10の発現については、市販の抗MYO10抗体では免疫組織化学に使用できる抗体はなかったため、Myo10遺伝子トラップマウスを用い、ノックインされたβ-galを抗体で検出する事により間接的にMyo10の生体内における発現を明らかにできた。 Myo10リコンビナントタンパク質を用いたプルダウンアッセイも、破骨細胞においてMYO10タンパク質と結合する共益因子候補を得ることができたことから、ほぼ当初の目的を達成できたと言える。
|
今後の研究の推進方策 |
Myo10の脛骨における発現パターンは、これまでの初代培養細胞を用いた研究結果から予想したものとは異なり、成長板に近い一次海綿骨に局在していた。まず、このMyo10発現細胞が何であるのかを調べ、破骨細胞であればそのサブタイプの特定を行う。その上でMyo10-KOと野生型マウスそれぞれから破骨細胞を分離取得し、血管関連破骨細胞の数・形態・遺伝子発現などの比較を行うことで、生体におけるMyo10の役割を明らかにしていく。 さらに特定の細胞、例えば破骨細胞におけるMYO10結合タンパク質を明らかにすることは、Myo10の役割を明らかにする上で重要な情報となる。Myo10に結合するタンパク質候補の質量解析を進め、発現解析の結果と併せて成長期の骨形成におけるMyo10の機能解明を目指す。
|
次年度使用額が生じた理由 |
他の研究グループから類似テーマでの論文が投稿され、投稿論文に追加実験が必要となりその費用に当てるため。
|