研究課題/領域番号 |
18K14615
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
吉田 純子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30769196)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 神経分化異常 / zinc finger protein / 1細胞解析 / 神経デフォルトモデル / 分化抵抗性 / ES細胞 / adult neurogenesis / 順遺伝学 |
研究実績の概要 |
申請者は、変異に伴いマウスES細胞の分化に異常をきたす機能未知のzinc finger protein(Zfp)遺伝子を同定し、その機能解析を進めている。 令和元年度は、本Zfp遺伝子の培養細胞レベルでの分子メカニズムの解明を目指して、前年度から引き続きChIP-seq実験の条件検討を行った。その結果、本Zfp遺伝子産物を特異的に検出できる適切なtagを決定することができ、現在シーケンス解析用のサンプルを作製中である。 また同じく培養細胞レベルでの分子メカニズムの解明のため、前年度に野生型ES細胞と本Zfp遺伝子破壊ES細胞の神経分化前後でのRNA-seq解析を行った。しかしこれは、神経分化誘導した細胞集団全体でのRNA-seqであったため、神経以外に分化した少数集団が邪魔をし、情報解析を行う際に苦慮した。そこで、今年度はさらに1細胞RNA-seqを行った。現在、情報解析の最中であるが、Zfp遺伝子破壊株のみに現れる分化細胞集団の特定に成功している。 当初の計画では、令和1、2年度に「マウス胎児個体での機能解析」と「ヒトのホモログの機能解析」を目指して、前者では本Zfp遺伝子が発現しているマウスの組織での解析、後者ではヒトホモログを破壊したヒトiPS細胞での解析を予定していたが、こちらについても順調に開始している。前者については、本Zfp遺伝子座に蛍光タンパク質をノックインしたマウスを作製し、後者についてはヒトiPS細胞でヒトホモログを破壊するためのtargeting vector作製中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度から引き続き行っている「培養細胞レベルでの分子メカニズムの解明」を目指したChIP-seq実験およびRNA-seqの情報解析で苦慮したこと、およびこれらの問題を解決するために1細胞RNA-seqという新たな実験を追加したことが主な原因である。
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今後の研究の推進方策 |
ChIP-seqに関しては、適切なtagを決定することができたので、サンプル作製を行っていく。 解析途中の1細胞RNA-seq解析では、本Zfp遺伝子破壊株のみに現れる分化細胞集団を特定することができたため、今後はその集団の背後に存在する遺伝子制御ネットワークの特定を行っていきたい。 また、本Zfp遺伝子座に蛍光タンパク質をノックインしたマウスを作製したので、今後は特にこのマウスの脳における遺伝子発現について詳細に解析し、機能を推定していく予定である。 ヒトiPS細胞での遺伝子ホモログのノックアウト株作製の準備もすすめているので、神経分化誘導時の経時的遺伝子発現の推移を調べ、マウスでの遺伝子ネットワークと比較することで機能解析をすすめていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度「1細胞RNA-seq」という高額な受託解析費用が必要な新たな実験を開始したが、このサンプルの情報解析結果次第では、再度1細胞RNA-seqを次年度に行う可能性があるため、今年度の予算を次年度に繰り越した。また、もし次年度に「1細胞RNA-seq」に使用しない場合には、ChIP-seqのサンプル数を増やす可能性が高いので、そちらに使用する予定である。
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