研究課題/領域番号 |
18K14618
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
清成 寛 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, ユニットリーダー (40721048)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 有袋類 / オポッサム / 生殖工学 / ゲノム編集 |
研究実績の概要 |
有袋類であるハイイロジネズミオポッサム(以下、オポッサム)は、従来のモデル哺乳動物にはみられない形態形成機構や環境適応のメカニズムを有する。本研究計画では、オポッサムの生体内における各種遺伝子機能の解析を可能とする生殖工学系技術開発並びに遺伝子改変オポッサム作製技術開発を目的とする。 これまでに、ホルモン投与量および雌雄を同居させる時期等を最適化する事による排卵、交配誘導のコントロールに加え、安定した受精卵の採取に成功した。また、ビデオ観察による交配時期の特定により、採取した受精卵が目的のステージを正確に反映していることも確認できた。 受精卵の移植に必要な偽妊娠オポッサムの作製については、ホルモン投与及び精管結紮した雄との交配を併用する事により、より確実な偽妊娠オポッサムの作製に成功すると共に、交配誘導についても、受精卵採取と同様、ある程度コントロールする事が可能となった。受精卵の移植については、上記偽妊娠オポッサムの子宮肥厚を確認した上で実施し、産仔を得ることにも成功した。但し、その効率は極めて低いため、更なる改善が必要である。 受精卵を用いたゲノム編集については、前核が確認できる時期の特定及び受精卵の構造など、その厳密なステージングを同定できたことにより、マイクロインジェクション等による胚操作に最適と思われる時期の特定ができた。この事から、今後は受精卵を用いたゲノム編集等による遺伝子改変オポッサムの作製を加速させる事が可能だと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
受精卵の採取において、条件検討による最適化に当初の予定より時間を要した。また、移植後の妊娠・産仔率の向上を目的とした偽妊娠マウス、受精卵双方の移植時期の最適化にやや時間を要している。全体的には着実に技術開発は進行しているが、当初計画に基づく進捗状況としてはやや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
比較的安定した受精卵採取や交配のコントロールが可能となったことから、今後は移植時期の最適化を精力的に進める事で、移植後の妊娠・産仔率の向上に重点的に努めていくと同時に、受精卵を用いたゲノム編集技術等による遺伝子改変オポッサムの作製について進めていく。産仔率が低い場合においても、初期胚の解析により、遺伝子改変オポッサムについての評価を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
受精卵の採取において、条件検討等に時間を要した事により、遺伝子改変動物の作製までには至らなかった。このため、遺伝子改変動物作製に関連する費用の支出が予定より少なかった。一方で、受精卵の厳密なステージングを同定できたことによる胚操作時期の最適化により、次年度については当初の予定以上に遺伝子改変動物作製が加速すると考えられ、飼育関連費用を含む遺伝子改変動物作製関連費用への補填を計画している。
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