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2019 年度 実施状況報告書

ナノディスクを用いた免疫受容体Mincleのコレステロール認識機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 18K14633
研究機関北海道大学

研究代表者

古川 敦  北海道大学, 薬学研究院, 助教 (30727699)

研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード免疫受容体 / 脂質 / 免疫活性化 / 自然免疫 / NMR
研究実績の概要

Macrophage inducible C-type lectin (Mincle)は、結核菌の表面に存在するトレハロースジミコレート(TDM)を認識する他、コレステロールなど様々な脂質分子を認識し、免疫活性化を引き起こす。Mincleのそれら脂質分子の認識機構を明らかにすることで適切な免疫制御が可能になると考えられる。本研究課題では水溶性の極めて低い脂質分子をナノディスクに埋め込み、NMR測定法を用いて、Mincleによるそれら脂質分子の認識機構を明らかすることを目的にした。
最初にMincleタンパク質を、これまでと同様の手法で高濃度に調製することに成功した。現在、NMRの帰属の結果について論文投稿準備中である。Mincleの滴定に用いるコレステロールを含むナノディスクの調製も並行して行った。調製したリポソームとMSPを用いて、コレステロールを含むナノディスクの調製を行い、ゲルろ過クロマトグラフィーにより、精製を行った。Mincleタンパク質へのナノディスクの測定実験を1H-15N Heteronuclear SingleQuantum Correlation (HSQC)法を用いて行なった。その結果、Mincleに対しナノディスク を3等量まで滴定を行ったが、滴定に伴い若干の化学シフト変化が見られたものの、その変化は小さいものであった。またその変化を濃度に対してプロットした結果、相互作用としては非常に弱いものであることがわかった。また、これまでに示唆されている結合に関わると示唆されたコレスロール結合モチーフのアミノ酸残基に着目したが有意なシフトは観測されていない。そのため、Mincleは通常の脂質膜に存在するコレステロールは認識しない、もしくは非常に弱く認識することが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

NMR測定に適したMincleタンパク質の高純度な調製およびコレステロールを含むナノディスクの調製に成功した。Mincleタンパク質の高純度な調製により可能になったNMRシグナルの帰属は現在論文投稿準備中である。さらに、本研究課題の目的であるMincleタンパク質へのナノディスクの滴定実験を予定通り進むことができたため、実験は概ね順調に進展した。一方で、滴定実験によるMincleタンパク質の化学シフトの大きな変化は見られなかった。このことは、通常量のコレステロールを含むナノディスクでは相互作用は弱い、もしくはほぼないことを示唆する結果であることが示唆された。そのため、Mincleは通常の脂質膜に存在するコレステロールは認識しない、もしくは非常に弱く認識することが明らかとなった。そのため、病態を真似たより高密度にコレステロールを含むナノディスクを調製し、滴定実験を行う必要とする結果を得た。また、炭素鎖が短い糖脂質については認識機構が明らかにされてきた一方で、炭素鎖が長い糖脂質については水溶性が極めて引くため、認識機構の解明が進んでいない。そのため、我々は長い炭素鎖を持つ糖脂質を含むナノディスクの作製を試みた。しかし、ナノディスク調製に必要な、それらを含むリポソームを調製することは難しいことがわかった。

今後の研究の推進方策

コレステロールを含んだナノディスクのMincleタンパク質への滴定実験により、Minleタンパク質は大きな化学シフト変化を示さなかった。このことは、通常量のコレステロールを含むナノディスクでは相互作用は弱い、もしくはほぼないことを示唆する結果である。今後は、コレステロールを増やして、高密度にコレステロールを含むナノディスクを調製を試みる。さらに、ナノディスク以外のコレステロールを可溶化する方法を用いて、認識機構を明らかにする。
さらに、Mincleは結核菌表面に存在するトレハロースジマイコレート(TDM)を認識するがその詳細な認識機構もわかっていない。その理解のために、TDMのような長い炭素鎖を持つ糖脂質を含むナノディスクの調製を試みたが、リポソームの調製が難しいことがわかった。今後は、適切な脂質鎖長を持つ糖脂質を用いて、糖脂質認識機構の解明を行う。また、今回の結果から、TDMのような長い脂質を持つナノディスクの調製には、マイコレート脂質と同様の炭素鎖を持つ脂質を用いている必要性が示唆された。

次年度使用額が生じた理由

研究者のグループが新たに導入したクライオ電子顕微鏡の技術習得のためのトレーニングやデータ測定のために多くの
時間を要したこと.さらには,前年度に本研究を進めた結果,他のアプローチ方法も検討したため.

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2019

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] Evaluation of the Reactivity and Receptor Competition of HLA-G Isoforms toward Available Antibodies: Implications of Structural Characteristics of HLA-G Isoforms2019

    • 著者名/発表者名
      Furukawa Atsushi、Meguro Manami、Yamazaki Rika、Watanabe Hiroshi、Takahashi Ami、Kuroki Kimiko、Maenaka Katsumi
    • 雑誌名

      International Journal of Molecular Sciences

      巻: 20 ページ: 5947~5947

    • DOI

      10.3390/ijms20235947

  • [学会発表] NMR analysis of Mincle with glycolipid reveals the detail molecular recognition mechanism2019

    • 著者名/発表者名
      古川敦、山崎晶、前仲勝実
    • 学会等名
      第48回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] Bacterially cleaved immunoglobulin Recognition mechanism by the immune activation receptor LILRA22019

    • 著者名/発表者名
      Rika Yamazaki, Atsushi Furukawa, Kouyuki Hirayasu, Hisashi Arase and Katsumi Maenaka
    • 学会等名
      第48回日本免疫学会学術集会
  • [学会発表] 免疫受容体PILRαの糖ペプチド認識機構解明とその創薬への応用2019

    • 著者名/発表者名
      古川敦、前仲勝実
    • 学会等名
      第51回ペプチド夏の勉強会
    • 招待講演
  • [学会発表] 免疫受容体のリガンド認識機構の解明2019

    • 著者名/発表者名
      古川敦
    • 学会等名
      日本生化学会 東北支部 第85回例会・シンポジウム
    • 招待講演

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公開日: 2021-01-27  

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