研究実績の概要 |
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は7回膜貫通型の受容体であり, アゴニストの受容に伴い複数のGタンパク質やアレスチンを活性化することによって複雑な細胞応答を引き起こす。GPCRの種類によって活性化するGタンパク質やアレスチンの程度の差は大きく異なるが, そのシグナル選択性の分子メカニズムは明らかになっていない。本研究では, GPCRの一種であるヒト由来エンドセリン受容体B型と, GiやGq, そしてアレスチンとの複合体構造をクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析によって決定すること目的としている。本年度は、複合体の各成分の試料調整系を確立した。まずG蛋白質との複合体調整に必要なエンドセリン受容体B型の全長の発現・精製系を確立した。受容体全長のN末端にFlagタグを挿入し、エンドセリン-1存在下でFlag-M1ゲルを用いたaffinity精製により精製した。次に、Gi蛋白質の調整系を確立した。さらに、GiおよびおよびGbeta Ggammaを昆虫細胞に共発現させて、His tagを用いたaffinityクロマトグラフィー、それに続く陰イオン交換クロマトグラフィーによってGiGbetaGgamma3量体を高純度で精製することに成功した。さらに、GiのN末端を認識し複合体を安定化させる、ScFVの昆虫細胞での分泌発現に成功した。培養上清から、His tagを用いたaffinity精製を行い、ScFVを高純度で精製することに成功した。こうした受容体、G蛋白質、ScFVを混ぜ合わせてゲルろ過クロマトグラフィーにより複合体画分の調整を行った。受容体の一部は複合体を形成していたものの、G蛋白質と結合していない受容体画分が多く、現時点ではクライオ電顕観察にまでは至っていない。
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