本研究は、構造解析が困難なプロテアソームと化合物の複合体構造を基にした高活性な新規薬剤開発を目指している。当初ゲル内結晶化法を参考に、プロテアソーム結晶形成後に疎水性の化合物を浸漬・結合させることを想定して研究を進めていたが、X線結晶構造解析により化合物由来の電子密度の確認ができなかった。プロテアソームの結晶は脆く、分解能が上がらないことも、解析が進まなかった原因の一つと考えられる。そこで、分子量がそれほど大きくなく、プロテアソームの活性を調節する重要なターゲット分子として、昨年度から新規植物プロテアソームシャペロンPBAC5の解析を進めている。本分子は対応するホモログが存在せず構造解析例がない。また、すでにホモログの構造決定が行われているシャペロン分子(PBAC1-4)に関しても、ヒトや酵母とアミノ酸配列の相同性が低く、新たな制御メカニズムの発見につながる可能性もある。本分子の制御によりプロテアソーム構築の制御メカニズムの詳細が明らかになれば、プロテアソーム機能の制御という点から当初の目的である高活性な新規薬剤の開発につながることが期待される。また、ゲル内での結晶化が結晶の質を向上させる可能性にも期待できる。このため、PBAC5及び相互作用するPBAC1/2等の複数の発現系の構築を行った。可溶性タグを融合した複合体発現系を用いることにより、PBAC5の安定な精製条件が確立できた。これらを用いて現在結晶化条件の検討を行っている。
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