研究実績の概要 |
本研究では、べん毛III型タンパク質輸送ゲートコア複合体の機能構造を原子レベルで理解するため、コア複合体を形成する相互作用ネットワークを遺伝学的および生化学的に解析するとともに、X線結晶構造解析法によりFliP, FliQ, FliRの構造を原子レベルで解明することを目指している。本年度の主な成果は以下に示す。 1.FliP/FliQ/FliR輸送ゲート複合体は5分子のFliP, 1分子のFliQおよび4分子のFliQから構成されること、FliQおよびFliRはFliPと直接相互作用することが明らかとなった。さらに、輸送ゲート複合体がMSリングの中心孔に結合した状態で単離精製することに成功した。 2.FliQの細胞質ループに存在する高く保存されているアミノ酸残基をアラニンに置換したところ、Gly-32, Gln-39, Thr-42, Glu-46, Leu-49およびLys-54がFliQの機能発現に重要であることが判明した。さらに、べん毛タンパク質輸送機能が著しく低下したfliQ(T42A)変異体およびfliQ(L49A)変異体から復帰変異体を単離することに成功した。それらのサプレッサー変異がFlhAおよびFliPに存在することが明らかとなった。 3.FlhBがFliP/FliQ/FliR複合体に直接相互作用することが明らかとなった。さらに、べん毛構成タンパク質が輸送ゲート複合体に結合できた場合でも、FlhB(E230A)変異が存在すると、輸送ゲートコア複合体の中心孔が開かないことが示唆された。 4.FlhAの細胞質ドメインが閉じた構造から開いた構造に変化するしくみを明らかにした。
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