研究実績の概要 |
本研究では、べん毛III型タンパク質輸送ゲートコア複合体の機能構造を原子レベルで理解するため、コア複合体を形成する相互作用ネットワークを遺伝学的および生化学的に解析するとともに、X線結晶構造解析法によりFliP, FliQ, FliRの構造を原子レベルで解明することを目指している。本年度の主な成果は以下に示す。 1.PhoA fusion assayによりFliP, FliQ, FliRのトポロジー解析を行った結果、個々のサブユニット分子がモノマー状態から会合状態へ遷移する際にそれぞれの膜貫通ヘリックス領域が大きく構造変化することが示唆された。さらに、FliPのペリプラズム側に位置するループ構造および92番目のロイシン残基がFliPの機能発現に重要であることが判明した。 2.FliKのN末ドメインとC末ドメインをつなぐリンカー領域の欠失の大きさに依存してフックの長さは短くなる一方、FlhB-Cとの結合親和性が減少し、その結果べん毛タンパク質輸送装置の基質認識モードの切り替え効率が低下することが判明した。 3.FlhBのC末細胞質ドメイン (FlhB-C) がFlhAのC末細胞質ドメイン(FlhA-C)に結合するとFlhA-Cが閉じた構造から開いた構造に変化し、その結果べん毛タンパク質輸送装置はべん毛繊維形成に関与するタンパク質を輸送することが明らかとなった。 4.ATPaseであるFliIがFlhB-Cに結合してATP依存的に輸送ゲートを開閉すること、FlhBのN末細胞質領域とC末天然変性領域が輸送ゲートの開閉に重要な役割を果たすことが示唆された。
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