研究課題/領域番号 |
18K14639
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
川本 晃大 大阪大学, 蛋白質研究所, 特任助教(常勤) (90631523)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | クライオ電子顕微鏡 / 蛋白質輸送 / 構造生物学 / 細菌 |
研究実績の概要 |
本研究は、抗生物質を使わず細菌感染を治療する新規治療薬開発に向けて、未だ明らかにされていないⅢ型分泌系の蛋白質分泌機構を解明することを目的としている。具体的には、同じⅢ型分泌系に分類される細菌べん毛蛋白質輸送装置に着目し、クライオ電子顕微鏡を用いてその全体構造を高分解能で明らかにする。野生型と蛋白質の分泌頻度が高くなる変異体の構造を比較することで、蛋白質輸送装置の構造変化を明らかにし、輸送装置の開閉機構および蛋白質分泌機構の解明を目指す。 2018年度はすでに精製方法が確立している、野生型蛋白質輸送装置の構造解析を行った。低分解能の構造解析に成功したが、2種類の構成膜蛋白質の位置を同定できず、精製過程で欠落した可能性が高い。そこで、可溶化に用いる界面活性剤の濃度や種類を複数検討し、野生型蛋白質輸送装置の構造解析を再度行う予定である。また、蛋白質輸送装置全体構造の精製だけではなく、部分構造の単離精製を試み、4種類の部分構造の単離精製に成功した。今後は、部分構造の構造解析も並行して行い、より詳細な構造変化を明らかにする予定である。 さらに、反転膜ベシクルの系を用いて、輸送過程中の蛋白質輸送装置の可視化実験をクライオ電子線トモグラフィー法を用いて行った。輸送基質を膜外から加えることで、反転膜内部に形成されたべん毛繊維および輸送基質と結合した蛋白質輸送装置の可視化に成功した。この実験系からATPase複合体によるATP加水分解エネルギーのみでも輸送が駆動すること、輸送基質どうしの相互作用が輸送順序や輸送効率に関係することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2018年度に行う予定であった野生型蛋白質輸送装置の構造解析および原子モデルの作成に遅れが生じているため。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度に引き続き、野生型蛋白質輸送装置の精製条件の検討を行い、高分解能での構造解析および原子モデルの作成を行う。また、当初の予定通り、蛋白質輸送装置変異体の精製実験および構造解析を行い、蛋白質輸送装置の蛋白質分泌機構の解明を目指す。さらに、クライオ電子顕微鏡で撮影可能な濃度、分散具合で部分構造の単離精製に成功しており、蛋白質輸送装置全体だけではなく、部分構造にも着目して構造解析を進めていく。
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