研究課題/領域番号 |
18K14641
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
鈴木 浩典 東邦大学, 薬学部, 講師 (20625694)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | オートファジー / X線結晶構造解析 / タンパク質間相互作用 |
研究実績の概要 |
オートファジーは真核生物に広く保存された細胞内分解系であり,細胞質やオルガネラをオートファゴソームと呼ばれる二重膜(隔離膜)で隔離したのち,リソソーム(出芽酵母の場合は液胞)と融合して内膜ごと分解する現象である。出芽酵母を用いた遺伝学的な実験から,約40種類のオートファジー関連(Atg)タンパク質が同定されている。これらの多くは高等真核生物においても保存される一方で,高等な生物に特有のAtgタンパク質や付加領域が存在し,酵母と高等真核生物とでオートファゴソーム形成過程が異なることが予想される。 本研究では,高等真核生物のオートファジー過程の最上流に位置するULK複合体の構造生物学的解析を行うことで,高等真核生物に固有のオートファゴソーム形成過程を明らかにすることを目的としている。 前年度ULK1のC末端領域とAtg13の天然変性領域とが相互作用することが明らかとなっていたため,その領域の絞り込みを行うとともに,当該領域の共発現系を構築してサンプル調製と結晶化スクリーニングを実施した。すでに構築していたAtg101とAtg13共発現系については,その評価を行うとともに,ULK1も含めた三者での共発現も検討した。いずれの場合は,ULK1単独では性状が悪く,取扱いが難しかったため,MBPを融合した発現コンストラクトを作成した。FIP200については,T4Lysozymeを融合した発現コンストラクトを構築し,そのサンプル調製と評価,結晶化スクリーニングを試行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに明らかとなったULK1のC末端側領域とAtg13の天然変性領域の相互作用についてAtg13側の絞り込みを行ったところ,10アミノ酸残基程度の2カ所の領域でULK1相互作用することが明らかとなった。当該領域を用いた結晶化の試行や熱力学的に結合定数を決定するため,それぞれ単独でのサンプル調製を試みたが,ULK1のC末端領域は単独では容易に沈殿してしまう。サンプルの安定性を高めるためMBPを融合した発現コンストラクトを作成し,サンプル調製を行うこととした。 T4Lysozymeを融合したFIP200は,結晶化スクリーニングを行った結果,一部の領域で結晶が得られたが,再現よく得ることができず,X線回折強度データの収集には至っていない。 Atg101とAtg13共発現系は良好なサンプルを調製することが可能となった。ULK1も含めた三者複合体では,上記のようにULK1単体の性状が悪く,共発現でもその性質を引き継いでいる様子である。こちらもMBPを融合したコンストラクトを用いる必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
ULK1のC末端側領域とAtg13の相互作用についてはMBP融合ULK1を調製できたので,等温滴定カロリメトリーによる結合定数の決定を行うとともに,これらの複合体の結晶化を試行する。Atg101とAtg13の各全長体の2者複合体,およびこれにMBP融合ULK1を加えた3者複合体に関しては,Atg13の天然変性領域を含むことから結晶化は困難であることが予想される。X線小角散乱等の手法を用いて溶液状態での構造情報を得ることを目指す。FIP200はT4Lysozymeを融合した形で結晶が得られたものの,再現性に問題がある。問題点を検証し再現よく結晶を得て構造解析まで進める。
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