オートファジーは真核生物に広く保存された細胞内分解系であり,細胞質やオルガネラをオートファゴソームと呼ばれる二重膜(隔離膜)で隔離したのち,リソソーム(出芽酵母の場合は液胞)と融合して内膜ごと分解する現象である。出芽酵母を用いた遺伝学的な実験から,約40種類のオートファジー関連(Atg)タンパク質が同定されている。これらの多くは高等真核生物においても保存される一方で,高等な生物に特有のAtgタンパク質や付加領域が存在し,酵母と高等真核生物とでオートファゴソーム形成過程が異なることが予想される。 本研究では,高等真核生物のオートファジー過程の最上流に位置するULK複合体の構造生物学的解析を行うことで,高等真核生物に固有のオートファゴソーム形成過程を明らかにすることを目的としている。 前年度ULK1のC末端領域とAtg13の天然変性領域とが相互作用することが明らかとなっていた。ただし,ULK1のC末端領域は単独では容易に沈殿してしまうことも明らかとなっており,MBPを融合した発現コンストラクトから試料を調製した。これを用い,Atg13の結合領域との相互作用解析を等温滴定カロリメトリーにより実施した。併せて,結晶化のために共発現系を構築し,その物性の評価と結晶化を実施した。FIP200については,巨大な蛋白質であるため,N末端側のみ,C末端側のみ,あるいは切断されやすい部分をトリミングしたコンストラクトを作成し,その物性評価を行うとともに,ネガティブ染色による電子顕微鏡観察を行い,その全体構造を見ることととした。
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