研究課題/領域番号 |
18K14642
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
中野 美紀 国立研究開発法人理化学研究所, 計算科学研究センター, 特別研究員 (40625894)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | X線自由電子レーザー / 単粒子解析 / 構造生物学 / 画像解析 |
研究実績の概要 |
X線自由電子レーザー(XFEL)による単粒子立体構造解析は、結晶化が難しい生体分子や生体組織を自然に近い状態で観察できる新しい構造生物学的手法である。しかし、XFELの強いビームを用いても、単粒子の生体分子から得られる回折強度は極めて弱く、回折画像のSN比は極めて小さい。期待される解像度で立体構造を復元するためには、必要な回折像の量と質を定量的に把握する必要がある。そのために本年度は以下の研究を行った。 1.シミュレーションにより作成した回折画像からリボソームの立体構造の回復を試み、分子構造を数nmの高分解能で再構成するための回折像を得るためのXFEL実験条件の最小要件を推定した。さらに、ビーム入射方向推定と波数空間での三次元立体構造復元の過程で、設定が必要なパラメータ値を決定するためのガイドラインも提案した。これらの結果はJ. Synchrotron Radiationより論文出版した。 2.ターゲットの分子サイズが異なる場合に期待できる解像度の違いをシミュレーションにより評価した。サイズが大きい分子の方がビーム照射条件が同じなら得られる回折画像の回折強度が高いため、高い解像度での構造復元が期待されると考えられてきた。しかし、回折画像の質は、分子の形状やターゲット分子と検出器の幾何学的配置などにも依存することがシミュレーション画像を用いた検証で明らかになってきた。 3.2018年度より、北海道大学の西野教授との共同研究を開始した。実際にXFEL実験によって得られ回折像より、数10 nm サイズの金属微粒子の立体構造復元を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 分子構造を数nmの高分解能で再構成するための回折像を得るためのXFEL実験条件の最小要件を推定した。これらの結果はJ. Synchrotron Radiationより論文出版した。 2. ターゲットの分子サイズが異なる場合に期待できる解像度の違いをシミュレーションにより評価している。異なるサイズ形状を持つ分子に対して最適な実験機器の幾何学的配置や画像処理のパラメータの推定を行っている。 3. 実際にSACLAのビームラインで撮影された金属微粒子の回折画像の画像処理を行っている。ビーム強度や試料に対するビーム照射位置のばらつきを考慮し、有効な画像選別法の探索を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
分子のサイズや形状に応じた実験条件と画像処理パラメーターの提示を目指す。また、XFEL単粒子解析で得られる回折画像の信号欠損領域を補いビームのばらつきを補正し、分子構造の復元に有効な画像を選別する手法を開発する。
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次年度使用額が生じた理由 |
所属機関より、当初予定していなかった研究資金の配賦を得ることができたため。繰越金は計算機の購入と学会発表のための旅費に充てる予定である。
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